彷徨──Sollow──

秋空 脱兎

Solo,sorrow,recovery

××21年3月26日(金) 天気:くもり

記録時間:22時33分

記録者:ジョン・ソロー John Thoreau

記録場所:ユーラシア大陸、どこかの国の施設跡(食料たっぷり残ってた)の外


 世界が滅亡して、オレが生き残って。世界を旅する事になってから何か月経ったか判らない。

 と書いてやろうと思ったのだが、今日含めて5年8か月25日だ。


 日数が判った理由は単純。毎日、日記を書いていたから。何冊も書いた日記帳を失くさず後生大事に持ち歩いているんだから我ながらご苦労なことだ。


 5年以上かけて旅して、世界が滅んだ理由が何となく分かってきた。


 オレが知っていたのは、ユーラシア大陸のどこかで大爆発が起きて、そこを中心にまるで伝播するように戦闘が起きて廃墟が増産されていった、ということ。


 どうもこの世界は『誰かが見ている夢』の一部が切り離され、勝手に育って形成されたらしい。こんな状況になる前だったらまず入れなかった場所に忍び込んで、情報を盗み見て判明したことだ。


 その施設で働いていた連中の正気を疑いたかったが、映画とかでしか見ないようなトンデモデザイン兵器の残骸が転がっていたり、見てるだけで正気が消し飛びそうな生物? の死骸? があちこちに落ちてたので、疑えなくなりつつある。


 つまり、トンデモ兵器運用する人類 VS 正気度消し飛びそうなクリーチャー。

 正解かどうかは知らん。答え合わせのしようがないから。

 

 まあ、正解知ったところで今更どうにもならんから、どうでもいいのだが。


 ……そろそろ書き残してもいいかもしれないな。


 正直に書くと、オレは世界がこうなって良かった、と考えている。

 人間に疲れたオレにとって、孤独な時間はこの世界にあるどんな物もより欲しかった。


 それが突然叶ったんだ。


 最初は大変だった。他人の力を借りることが出来ないのがこんなにも大変だとは思いもしなかった。所詮自分一人でも生きていけると勘違いしていただけなんだ、と。

 だが、その内に慣れた。適応出来たのだ、


 今のオレはここまで生きてきて一番心穏やかで、身体健やかな状態だと思う。

 これがいいことなのかは、判別がつかない。つける気はないし、オレを見て何かを感じる誰かは、いない。


 ただ、人の目を気にしなくていいのは確かだ。

 オレは、他人がとても怖かったんだ。

 何されるか分からないし、何言われるか分からないし。


 たとえ、どれだけ長い付き合いの間柄だとしてもだ。


 昔のことを思い出して、感情の処理が出来なくてどうしようもなくなって叫んでも、うるさいと言われることはない。

 下手くそな歌を歌っても、誰かに嗤われることもない。

 将来のことをとやかく言われることも、もうないだろうし。とても、気が楽だ。


 今日はこんなもんでいいか。

 明日はここをもう少し探索しようと思う。

 食料以外にも何か使える物があるかもしれない。欲を言うなら、銃と弾薬、乗り物が欲しい。

 ~~(※締めようとした跡)あ、追記しとくか。


 星空が物凄くきれいだ。

 都合の良いことに一眼レフカメラとこれを扱う技術があるので、一枚撮っておこう。誰に思い出を語る訳でもないが、撮りたくなったから。


 いつまで生きていけるか分からないけど、明日も生きていこう。

 もう、誰に気を遣う必要もないのだから。

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