お花見でいい場所GETしたのに誰も来ない!!あれっ、今日お花見やりますよね?

GK506

お花見でいい場所GETしたのに誰も来ない!!あれっ、今日お花見やりますよね?

 会社の花見の場所取りを命じられた僕は、朝4時30分に起床、5時には家を出て6時には現地に到着。


 誰もいない早朝の公園で、これ以上はないであろうという程の最高のお花見スポットにブルーシートを敷いて、僕の一人孤独な場所取りが幕を開けた。


 全ては会社の仲間達の笑顔の為、僕は満開の桜の木の下で、スマホゲームに没頭している。


 気が付けば、いつの間にか時刻は9時を回っていた。


 公園は徐々に人で賑わい始めたが、僕は相変わらず一人ぼっちで場所取りに励んでいる。


 お花見の開始時刻は午前10時。


 流石に1時間も前にやってくる人間はいないかと、僕はまたスマホゲームを始めるが、しばらくするとLINEのメッセージが入った。


 部長から届いたメッセージは、【スマン、息子が熱を出してしまったから、今日の花見は行けそうにない。私は参加出来ないが、皆で存分に楽しんでくれ】というものであった。


 部長は来れないのか。


 でも、部長が来ないのであれば、思う存分羽を伸ばす事が出来る。


 管理職の人間は、今日は無礼講だとかいう癖に、いざ礼をしっすると怒り出すから困りものである。


 気を取り直してスマホゲームを始めようとしたら、またしてもLINEのメッセージが入った。


 今度は同期の田辺たなべからのメッセージ、


 【琢磨たくま、悪い、急用が出来て花見参加出来なくなったわ。皆には上手く言っておいてくれ、今度メシおごるから。頼むな】


 田辺からのメッセージを読み終えた後で、またしてもLINEのメッセージが入る。


 部署のマドンナ、花鳥園かちょうえん茉莉奈まりなからのメッセージだ。


 【岡田おかだ先輩、すいません。今日、お花見行けなくなっちゃいました。楽しみにしてたのに、残念。皆さんで楽しんできて下さいね。それではまた、会社で】


 茉莉奈ちゃんが来ないとなると、お花見の楽しさは95%減であるが、僕は場所取りを任命されたのであるし、こんなにもいい場所をGETしたのだ。茉莉奈ちゃんが来れないのであれば、今日は仲間達と楽しく飲んで語らう事にしよう。


 何やら不穏な空気が漂い始めた所で、またしてもLINEのメッセージが入る。


 課長からのメッセージ。


 【岡田、悪いな、得意先からの急な呼び出しで花見には参加出来そうにない。皆によろしく言っておいてくれ】


 気が付けば、時刻は9時45分。


 花見開始15分前であるのに、僕の広げたブルーシートに会社の仲間達の姿は無かった。


 えっ、何これ?えっ、もしかして、誰も来ないなんて事ないよね?いやっ、あるわけないよ。流石に、ねぇ?


 お花見シーズンど真ん中、日本有数の桜の名所であるこの公園の、お花見ベストポジションに、こんなでっかいブルーシートを敷いて、まさか僕一人でお花見なんて、そんな大それた事を出来る程の鋼のメンタルを僕は持ち合わせてはいない。


 誰か来てくれ、誰でもいいから、もうこの際、生理的に受け付けない先輩の木下きのしたさんでもいいから、来てくれ!!


 僕の心の叫びが届いたのか、木下さんからLINEのメッセージが届いた。


 【岡田、お花見の場所取りおつ。悪いんだけど、なんかちょっと花見行くのだるくなったから、今日俺不参加で頼むわ。じゃあそういう事だから、チャオ】


 あぁ、やっぱり僕は、この人は生理的に受け付けない。


 気が付けば、時刻は10時を回っていた。


 ベストお花見ポジションで、大きなブルーシートの上に一人立ち尽くす僕に、桜の花びらが舞い落ちる。


 満開の桜を見上げると、筆舌に尽くし難い程に綺麗だった。


 たまには、一人でする花見も悪くないな。


 この日みた桜は、今まで見たどの桜よりも美しくて、僕は、いつまでも目を離す事が出来なかった。


         おわり


 


 


 

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