真相。

 先日、私の電話をとった本・物・の・刑事さんの計らいにより、大掛かりな捜査が行われた。

 これだけ周到な計画を練った連中だ。いくら本・物・の・刑事が動いたとしても、そう簡単にはいかないだろう。


 そうやって諦めていたのだが。


 捜査が始まってから数日後。


 太郎を名乗った男が逮捕された。


 そして、今まで逮捕されたふりをしていただけの受け子も全員お縄となった。

 驚くほど早い展開だった。

 やっぱり本・物・は違うなぁ。


 以下、主犯格と思われる太郎を初めとする、今回の逮捕者による供述を鑑み、私なりの考えをまとめた。


 ===


【受け子による供述より】

 受け子は全員学生だった。

 バイトがなかなか決まらない中、”時給のよいバイトがある”と誘われたという。

 勧誘の媒体はSNS。

 DMで話しかけてきたという。

 警察が、即刻アカウントの持ち主について調べようと試みたが、捨てアカウントだった上に、IPアドレスもネットカフェの物であったため、個人特定は不可能とのこと。

 この受け子に関しては、全員送検されるとのこと。

 また、バイト代は全額没収し、私へ返金されることになった。


 ただ、受け子全員のバイト代を合わせても200万円にもならなかった。



【太郎を名乗った男による供述より】

 本名は知らないので太郎と呼ぶ。

 太郎の供述は破綻していた。

「俺も雇われたんだ」

 この一点張り。

 ある日電話がかかってきて、かけ子としての仕事を頼まれたという。

 電話を私の家にかけるのも、雇い主の指示だと言うのだ。


 更に不可解なのは、受け子はもちろん、刑事役の男ついても、全員面識は無いという。


 バイト代として、太郎の懐にあったのは80万円程度であった。


【刑事役の男による供述より】

 この刑事役の男もまた、太郎と同じく「雇われたんだ」の一点張り。

 同じように電話で誘われ、全ての行動は指示通りだったという。


 バイト代は100万円程度だった。


 ===


 仮に全てを信じるとして、じゃあ主犯は誰なのだろう。

 これに関しては警察もお手上げだった。

 ただ、民事の時効が来るまでは捜査を続けてくれるとのこと。


 長い戦いが始まりそうだ。




 あ、そうそう。

 今回電話で雇われた二人に共通点が無いか聞いてみたんだよ。




 二人とも、私・の・持・っ・て・る・の・と・同・じ・黒・電・話・を・持・っ・て・い・た・らしい。




 それ以外のことはよくわからない。

 回収できていない約600人の諭吉は未だに戻って来ていない。

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黒電話の悪魔 柿本 修一 @shuichi_kakimoto

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