ソロ〇〇と先輩と後輩くん

ジュオミシキ

第1話

「後輩くん、なんだかやけに楽しそうだね。何かあったのかい?」

「あ、分かりますか。そうなんですよ先輩、実は今度、僕ソロ…」

「時に後輩くん。この前貸した本はどうなっているのかな?もし読み終えたのなら一緒に話でもしたい所だけど」

「すいません、それまだ読んでる途中なんですよ。そうそう、だからその本も今度のソロ…」

「後輩くん、猫がいるよ、猫二匹。喧嘩しているみたいだね」

「あぁ、ほんとですね」

「かわいいね、餌でもあげれば喧嘩もやめてくれるだろうか」

「う〜ん、流石に餌はあげちゃダメだと思いますよ。あ、でも餌だったら今度行くソロ…」

「あ、見てみて後輩くん、あんな所に真っ白なカラスがいるよ」

「え? ああ、電柱の上にいるあのカラス、たしかに白いですね。目は赤ですけど」

「そうだろう?見事に白く輝く……って白いカラス!?」

「なんで先輩が驚いてるんですか。見つけたの先輩じゃないですか」

「あ、うん。普通にびっくりしてるよ。ああいうのはアルビノという個体らしくて、滅多に見れるものじゃないからね」

「アルビノですか?へえ〜、僕初めて見ましたよ。 あ。アルビノといえば、今度僕が行くソロ…」

「後輩くん、

「……」

「なんだい?私の顔に何かついているのかな?ほら、とってくれたまえ」

「……ソロ」

「後輩くん、私の手をよく見ておくんだ。今から3、2、1、と言うからそれに合わせて」

「……祖母」

「後輩くん、君は明日の天気を知りたいとは思わないかい?この辺をこうしてこうすると大体の雲の流れを読めて……。ん?君は今、祖母と言ったのかな?」

「なんとなく分かってましたけど、先輩この話題を露骨に避けてますよね。僕がソロって言った途端に慌てて他の事に話を移しますし」

「……だって、君が私を置いて一人だけでどこかに行こうとするじゃないか。 ソロってあれだろう?おおよそ後ろにはキャンプだとかそういう単語が付いてくるものだろう?」

「まあ、そうなりますかね。だってソロですもの」

「……寂しいじゃないか」

「まさかそんなにはっきり言われると思わなかったので、そう言われるとなんだか嬉しいんですけど、こればかりは一人じゃないと」

「………」

「……先輩、まだ出発までかなり時間もありますし、それまでいつもよりもたくさん話しましょうか」

「……ぅん」

「それで帰って来たら、と言っても二日間だけですけど、その間に起きた出来事をお互い話しましょう。そうしたらきっと、寂しい事よりも楽しみな事が少しでも多くなりますよ」

「……うん」

「何を話そうかってあれこれ考えてたら、二日なんてあっという間に過ぎちゃいますよ。ちなみに僕の方はネタが尽きないくらいだと思いますから期待しておいてください」

「……私も、君に負けないくらい面白い事を用意しておくよ」

「それは楽しみです」

「……ありがとう後輩くん、もう大丈夫。私もちゃんと受け止められるよ」

「はい」

「ああ、そういえば何度も遮ってしまって結局聞けてなかったね。それで、君は何をしに行くんだい?」

「実は“ソロをどるふぁせば”に行こうと思ってまして」

「ごめん、まず“をどるふぁせば”から説明してくれないかな」

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