三人目の婚約者
唇がくっつくほどに近づいたリズの肌は桜色に染まっていて、閉じられた目のまつ毛は長く綺麗な銀色だった。唇を通してリズの緊張と震えが俺にまで伝わってくる。
リズは10秒ほどキスをした後、恥ずかしそうに俺から距離を取ってそっと自分の唇に触れていた。
「……こ、これは、その。ハイトさんがボクを倒したご褒美と言うかぁ、ボクと結婚しようって言ってくれたお礼みたいなものですぅ」
「ご褒美で、お礼、ですか」
「ご褒美で、お礼です!」
そう言うリズの顔は真っ赤で、どう見ても照れ隠しだった。いつもマイペースで偉そうにしているリズ先生のこういう姿を見るとちょっと虐めたくなる。
どうしようかと考えて、俺の視線はリズの胸元のたわわに落ちた。
「……だったらその、胸も触らせてくださいよ」
い、いや、流石にこれはちょっと言いすぎか? ……虐めようと思った結果、しくじって墓穴掘ったか? 俺。どうしよう……。
リズはその大きな胸が形を変えるくらいギュッと手で隠すように抱きしめ、その空色の瞳で少し泣きそうになる。
俺は「やっぱ今の冗談です!」とチキンなギブアップ宣言をしてしまおうかと弱気になるけど、でもそのたわわに触れさせて貰えるチャンスを考えるとのどが震えて言葉が出てこない。
それから10秒。いや、20秒は経っただろうか?
「せ、セクハラ小僧……」
そう言いながら、リズ先生は黒い魔導ローブを脱ぎ、シャツとズボンと言う動きやすい格好になる。シャツは白く、汗を掻いたリズのちょっとエッチな黒いレースのブラが透けて見えていた。……この前は色気のない灰色の無地のやつだったのに。
リズは透けてるのが恥ずかしいのか胸を隠すように猫背になった。
「そ、その、シャツの上からならぁ……」
「ぶ、ブラは取ってくれないのですか?」
「…………」
俺が言うとリズは本当に恥ずかしくて泣きそうな顔になる。リズのブラはきっとその質量のたわわを支える為にかなり頑丈に作られている。
あれがあるのとないのとでは、やはり触った時の感触に大きな差が出る。
だがこれで断られてしまっては元も子もない。取り消すか?
いや、でも……。俺は待った。耐えた。この緊張感に。
そして30秒ほどの沈黙の末に、リズは根負けしたように肩を落としてブラを外した。こうなると汗に濡れた白いシャツなど無いに等しい。
リズのたわわの形もありのままの大きさも、桜色も見える。
だけどその桜色は薄く濡れたシャツに一切浮かび上がってない。……も、もしかして陥没してるのか?
リズは恥ずかしそうにもっと背中を丸めて、上目遣いで泣きそうな目を俺に向けながら小声で
「ど、どうぞ」
と胸を差し出した。
「で、では……」
俺はそっとリズのおっぱいに手を伸ばす。汗で濡れた白いシャツはしっとりしていて、力を少し入れると指が吸い付くように沈み込んでいった。
やわらかくて弾力がある。だけど俺の手のひらにはどんどん堅く大きくなっていくものの感触がある。
少しだけ手を離すと、ただでさえ濡れて薄くなっていたシャツの上からピンク色のが大きくピンと形を丸わかりにしていた。俺はそれを摘まんでみる。
するとピクンと露骨に身体を跳ねさせたリズが俺を突き飛ばした。
「こ、これ以上はもうだめなのですぅ!」
リズはいそいそと黒いローブを羽織ってその中でもぞもぞと黒いレースのちょっとエッチなブラを装着し直しているようだった。
手に残るリズのおっぱいの感触。もっと。可能なら永遠でも触って痛かったけど、それでも俺の中には充足感で満ち溢れていた。
「そ、その……。エッチなのとかはボク、あんまり得意じゃないのでぇ、もっとゆっくり時間をかけてやって欲しいのですぅ」
「つまり焦らすようにするのがお好みってこと?」
「ち、違うのですよぉ! ……うぅ。何でボク、こんなセクハラ小僧の事、す、好きになっちゃったんですかねぇ?」
リズは悔しそうにそう言いながら、いそいそと背を向けて去ろうとする。
俺はそんなリズの白い手を掴んで引き留めた。
「ま、まだ、何か用ですかぁ?」
「リズの事、レイナに紹介したい」
「……解ったのですよぉ。でも今日の今日でアポが取れると思わないですしぃ、このペンダントを渡しておくのですよぉ」
そう言ってリズが渡してきたのは青色の宝石がついた綺麗なペンダント。
「それに魔力を流すとボクのペンダントが光るようになってるのですよぉ。光ったら場所も解るからテレポートですぐに飛んでいくのですよぉ」
「な、なるほど」
そんなアイテムがあったのか。JROの連絡手段はチャット機能で完結してるから使う機会もないし、知らなかった。
なんか感覚的には魔法版の便利な狼煙って気分だ。不便なポケベルとも言う。
それだけ言ってリズは去って行った。
ま、まぁ。冷静に考えたらレイナたちへの紹介は明日の方が良いか。俺は泊っている宿に直行して、リズのたわわの感触を思い出しながら――これ以上は語るまでもないだろう。
◇
翌日、俺とリズとその向き合う形でレイナとラグナが学園長室の机に座っていた。
ラグナは魔界、デュークハルト領で一週間近く開けて久々に帰ってきた俺の部屋に朝っぱらから突撃してきて、めっちゃ抱き着かれた。
レイナは王城の衛兵に声を掛けたらすぐに出て来てくれた。
ラグナは一週間も開けたのに、久々に会う今日の今日で――と言う事で少し、いやかなり不機嫌そうで。レイナの表情は『無』だった。
地獄のような、修羅場のような重い空気。
……この前、女が出来たら早めに紹介しろとレイナとラグナの二人に強く言われたので、その通りにしたんだけど、あまりの空気に胃が痛くなってくる。
「そ、その……彼女はリズさんで、その……将来的には彼女とも結婚したいと思っています」
「よろしくお願いしますぅ。リズベット・シュバルツですぅ」
「どうも。レイナ・ハーメニアです。魔界の説ではハイトがお世話になったようで。もしかしてそれでですか?」
「その。それも大いにあるけど、決定的なのは昨日で――」
「ハイトさんに立派な男を見せられて、好きになっちゃいましたねぇ」
昨日の初心でずっと顔を赤くしていた可愛いリズはどこに言ったのやら、その空色の瞳よろしくとても声が冷たい。レイナも笑顔なのに目が笑っていなかった。
ラグナは不機嫌そうでありながらも、少し俯いてだんまりを決め込んでいる。
「そうですか。では私たちと一緒にハイトを支えて行きましょう。とは言え、正妻は私なのでそこは弁えて頂けると助かります」
「ええ、勿論ですよぉ? 尤も、ハイトさんが誰を一番愛してくれるのかはハイトさんが決めることなんですけどねぇ」
リズはそう言って笑うと、レイナとラグナがとても厳しい目をしていた。怖い。
……お、おっぱいを触りたいって言ったこと、実は根に持たれているのだろうか?
うふふふ。と笑うリズの、なんかキャラスペックとしての強さとは別の怖さを垣間見る。レイナもラグナも怖いし。
「……そ、その、出来ればもっと仲良くしてくれた方が――」
「「「ハイト(さん)は黙ってて(ください)!!」」」
「す、すみません」
う~ん。明らかにタイミングが悪かったな、これ。
それから俺は更に半日ほど、この地獄のような空気の修羅場を味わった。
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