毎週課題の結果発表

 支部長との話を済ませた帰り、何気にこの世界に来てから初めて自身のレベルとステータスの実数値を確認した帰りに、ギルド嬢のニーナに呼び止められ職員しか入れない裏の方にまで連れ込まれた。


 ……上がったレベルに舞い上がって忘れていたが、そう言えばフォレストドラゴン討伐の報告をしたときに嘘だったら俺が冒険者資格を返納するだの、嘘じゃなかったらおっぱいを直に揉んで良いだのの賭けをしたんだった。

 いや、でも流石にこれ以上浮気みたいなことは……


「あ、あの……」


 そう思って断ろうとしたときに、受付嬢のニーナさんはパチンと音を立ててその巨乳を弾ませた。……ホックを取ったんだ。

 その事態に俺はなにも言えなくなる。俺は哀しいまでに欲望に弱い男だった。

 自分を強く律することが出来て、誠実な人間ならそもそも前世で就活や大学の卒業から逃げ出し、JROにのめり込むこともなかったんだろうけど……。


 そうこう考えている内にニーナさんは、受付嬢の露出の少ないぴしっとした制服を開けさせ、着衣時よりも更に大きな胸を露出させた。


「そ、その……は、恥ずかしいのであんまり見ないで……ください」

「は、恥ずかしがることないと思うよ。スゴく綺麗だし……」


 俺は思わず、そんなことを言っていた。

 何気に女性の胸を生で見るのは初めてだった。……こんな感想しか言えない自分が情けないけど、前世で見たどのグラビアアイドルやAV女優よりもニーナは綺麗だった。


 俺はおそるおそるニーナさんのおっぱいに手を添える。

 そして指をその柔らかな胸に沈ませた。その感触に感動する。しかし、ニーナさんは涙目になって、顔を真っ赤に染めていた。

 俺はなんだか悪い事をしているような気分になって、慌てて手を離した。


「その、あ、ありがとうございました! ば、罰ゲームはこれで十分です!」


 俺はバッと後ろに振り返りそのままニーナさんからスタスタと離れていく。


「……もう、良いんですか?」


 からかうようなニーナさんの声とあの幸せな感触には後ろ髪を引かれる思いだが、これ以上は俺も理性を保てなくなってしまいそうだった。

 宿に帰った後、あの感触を思い描きながら自家発電したことは言うまでもない。



                    ◇



 数日後。毎週課題の提出は基本週末だし、ドラゴンの解体もまだ終わってなかったみたいなので、普通に授業を受けたり、ラグナといちゃいちゃしたり――あとは人目を忍んでレイナに生命樹の果実をプレゼントしたり、キスをしたりした。


 レイナは王族で一人になれる時間もかなり少ないので、あんまり会話やいちゃいちゃ出来ないのが非常に残念だが、それはレイナと婚約を復縁するまでの辛抱である。

 寧ろ、同じクラスになればもう少しだけ接する機会も増えるかもしれないし、やはりフォレストドラゴンの皮には期待したいところである。


 そんなこんなで迎えた提出日前日、俺とラグナはギルドにフォレストドラゴンの皮とその他素材の買い取り代金を受け取りに向かった。


「ご、五千万ジョル!?」


 その代金の大きさに、ラグナは声を荒げた。

 正直、俺も少し驚いている。JROでフォレストドラゴンのドロップアイテムを冒険者ギルドと取引したときの相場は精々一千万~千五百万ジョルくらいだ。

 なのに……


 いや、あれか。JROと違って、ここは現実だ。ドロップアイテムでもない肉とか骨とかも全て売れるんだろうし、鱗だって十枚二十枚じゃなくて何百、下手すれば何千枚も取れるのだ。

 現実スゲえ。ゲームより儲かるとか、この世界は神なのかもしれない。


 こ、これだけの大金があればどんなレベリングが出来るんだろう……。


 いやJRO廃人御用達のレベリングをするにはもっともっと金が要るけど、でも俺のレベルはまだ30帯――でも、これだけあればレベリングの幅も広がるし、60帯くらいにまでは一瞬で上がれるだろう。

 強くなれる自分に鼻の穴と胸が大きく膨らんだ。


「それで、これが五千万ジョル――とプラスして依頼達成料の一千万ジョルの計六千万ジョルだ。儂は強き冒険者は門地職業に関わらず正当に評価するのが心情だからな。ハイトくん、良ければ今後も我がギルドを贔屓にしてくれ」

「も、もちろんです!!」


 この人には推薦状を認めて貰った恩もあるし、せめてこの街に居る間はこのギルドと良い関係を築きたいとも思う。

 俺は、ギルドの支部長と握手を交わしてギルドを出た。


 因みに俺はラグナに「山分けにしよう」と提案したけど「全部ハイトが持ってなさい」と言われてしまった。

 曰く「そもそも私はフォレストドラゴンを倒すときに何もしてないし、お金までは受け取れないわ。それにどうせ将来私はハイトのお嫁さんになるんだから、ハイトがお金を持ってても私が持ってても実質的にはそんなに変わらないわ」とのことらしい。


 ここまで言われて無理矢理押しつける訳にもいかないし……。


 まぁ、この辺はちょこちょこ還元していけば良いだろう。

 好きな女の子を贅沢させて上げられる程度のお金を稼ぐのは、この世界の俺なら割と簡単なことだしね!



                    ◇



 そんなこんなで迎えた毎週課題提出日。


 提出日の放課後にはその週で尤も優秀な成果を収めた人が表彰されるのだが、今週は初めての週と言うこともあって、やはりその盛り上がりは一入だった。

 何事も最初が肝心だ。だからこそ、この最初の週に最優秀賞を表彰されるかどうかで今後の学園生活にもそれなりの影響を及ぼしていくと思うのだ。


「ハイトくん。『農民』の君は一体何を提出したのかな?」

「…………」


 名前をど忘れしたのか、そもそも名乗られてないのかすら忘れたが――ニヤニヤと『聖司祭』くんが俺たちに近づいてきた。


「俺たちはなぁ、聞いて驚け? ブラックターキーの羽を提出したんだ!」

「ぶ、ブラックターキー!?」


 ……ブラックターキーの羽は、毎週課題の素材提出の中ではCランクに相当する――『聖司祭』のようなハズレ職が、用意できる素材なんて精々スライムの魔核かゴブリンの腰布くらいだと思っていたのに。


「はっ、驚き過ぎて声も出ないようだなぁ? 入学早々ブラックターキーの羽を持ってこれる奴なんて中々居ないぜ? ましてや農民のカスなんか足下にも及ばないだろ? くっくく、その女は後で俺たちのものだな?」

「だな、折角だし回そうぜ?」

「そうですね、それが良いでしょう」


 そう言って『聖司祭』の後ろから、がたいの良い男と細身の男の子が出てくる。そして細身の男の子の方が、俺の方に寄ってきて耳打ちしてくる。


「僕は『商人』の職を授かったペリルと申します。貴方の恋人は後で『聖司祭』様が輪姦すことになりそうですが、その後は金額次第で便宜を図ることも出来ますよ。

 あぁ、まぁ。農民がお金を持っているわけありませんし、無意味な話でしたね」


 ……なるほど、ペリルか。よく見ればこいつ、JROでも見たことある奴だわ。


 ペリル・アーカンソー……中々に癖のある奴で、毎週課題は市場で仕入れた素材を提出して成績を維持しているような奴だった。

『聖司祭』がブラックターキーなんてと思ったがなるほど、こいつの差し金か。


 まぁ、何でも良いか。

 放課後、壇上に立つ学園長が発表する。


「諸君。今日は最初の毎週課題の提出日だ。出せていない奴は大幅な減点。よりランクの高いものを提出したグループは大幅な加点がある。

 さて、ではこれから最も優秀なものを提出した班を発表する!!」


「三位、ブラックターキーの羽。Cランクの素材を提出したヒーライル班」

「おぉ、三位か。一位いけると思ってたけど今年はレイナ様も居るからな」


『聖司祭』はどや顔で壇上に上がっていく。


「二位、ワイバーンの皮膜。Bランクの素材を提出したレイナ・ハーメニア様の班」

「…………」


 レイナは悔しそうな表情で俺の方をチラリと見てきた。

 会場からも「嘘、レイナ様が?」と、戸惑いの声が上がっていると同時に、やはり亜竜であるワイバーンを討伐したレイナはスゴいと賞賛されている。俺も、実際この段階でそこまで強くなったレイナに感心していた。

 ワイバーンはレベル40はないと狩るのが難しいモンスターだからだ。


 ただ、ここでレイナが呼ばれたことでランキングに不正がなさそうで安心していた。


 まぁ提出した素材はそのまま学園に寄贈されるし、フォレストドラゴンの経済効果を考えればそんな真似はしないか。

 英雄学園も、無料で運営できるわけじゃないからな。


 そして


「一位、フォレストドラゴンの皮。Sランクの素材を提出した、は、ハイトくんの班……」

「「「「「え、えぇぇええええええ!!!!」」」」」


 俺の名前が呼ばれると同時に、学園には驚きの声が響き渡った。


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