ドラゴン討伐の報告

「すみませーん。フォレストドラゴンの討伐が完了したので、確認をお願いしたいんですけど」

「はいはい。フォレストドラゴンの……討伐!? いやいやいや、確かハイトさんってCランクの冒険者でしたよね」

「ええ、まぁ……」


 一応Cランク冒険者到達最年少記録を更新したとか何とか言われているらしい。

 まぁJROをやりこんだ俺的には、安全策をとってかなりゆっくり進めているつもりではあるけど。


「……ハイトさん貴方は、フォレストドラゴンの動向調査及び討伐の依頼を受けています。虚偽の報告は罰則の対象になりますが――」

「疑い深いですね。もっと人を信じてみたらどうなんでしょうか?」

「……でも、ハイトさんって『農民』なんですよね? 正直『農民』が発覚した時点で一度Eランクからやり直した方が良いと思うんですよね、私は」


 金髪の受付嬢は、冷たい目で俺を見てくる。冒険者ギルド内は冒険者たちが騒がしい上に、壁も分厚いので外の騒ぎが聞こえないのかもしれないけど。

 しかしこのあからさまな『農民』差別。この受付嬢は或いは英雄学園の卒業生だったりするのかもしれない。どうでも良いけど。


「そこまで言うならなにか賭けますか?」

「良いですね。では、フォレストドラゴンが討伐されていなかった場合は虚偽報告の罰則に加えて、冒険者の資格を返納してください」

「……お、重いっすね」

「本当なんでしょう? なら問題ないのでは?」


 いやまぁ問題ないけど。


「で、本当に討伐してたら?」

「特別に私のおっぱいを直に揉むことを許可します」


 冒険者資格の剥奪と釣り合ってないように思えるけど――俺は視線を軽く落として、受付嬢の胸を見てみる……で、デカい!

 顔はJROのNPCなだけあってよく見れば美人さんだし……うん、まぁ


 いや、やっぱりそう言うのは良くない。この前ラグナを嫁にするのを認めて貰ったばかりだし、これ以上他の女の子に現を抜かすのはレイナへの裏切りになる……!

 

「その、やっぱりさっきのは――」

「今更、なしとか言わないでくださいね?」

「うっ……」


 そりゃそうだよなぁ! 先手を防がれて戸惑っている間に受付嬢は冒険者ギルドの扉を開く。目の前にはグラコスの森から頑張って引っ張ってきたフォレストドラゴンと、それを見張るラグナがいた。


「え? ほ、本物!? ……う、嘘じゃなかった?」


 受付嬢は俺とフォレストドラゴンを何度も交互に見返す。

 そして受付嬢は顔を赤く染め、屈辱そうに下唇を噛みしめながら


「……と、とりあえず支部長を呼んできます。賭けの罰ゲームはその後で……」


 受付嬢は去って行った。あの受付嬢、プライド高そうだったしなぁ。あの表情を見る限り賭けの件はうやむやにされなさそうだった。

 別に俺としては反故にされても構わないんだけど……。


 そんなことを考えている内にさっきの受付嬢が先月俺たちに推薦状を書いてくれた支部長を連れてきた。


「いやいや、流石に学生がフォレストドラゴンなんて……ええぇぇええ!??」

「本当でしたでしょう? では賭けのお給料アップよろしくお願いしますね」

「ぐぬぬぬ。わ、儂の自腹になるよなぁ、それ?」

「はい、まぁそうですね」


 あの受付嬢さん、結構面白い性格をしているなぁ。JROだと機械的な挨拶を繰り返すだけのNPCだったけど、そういう所もこの世界が現実化した所以なのか。

 中々に強かな様子に、思わずクスリと笑みが漏れる。


「……ぐぬぬ。とりあえず、ハイトくんとラグナくんに確認するが……そのドラゴンは二人で倒したのかね?」

「はいそうです」

「いや、殆どハイト一人で倒してたわ!」


 いや、一応ラグナのお陰で生命樹の種の予備を拾えたし、助かった部分もあるんだけど……


「まぁ良い。とりあえず二人とも支部長室まで来てくれ。ニーナ、お前はフォレストドラゴンをちゃんと管理しておけ」

「勿論です」


 受付嬢が冒険者に指示を出してフォレストドラゴンを運ぶのを確認してから、俺たちは支部長室に着いていくことにした。



                    ◇



「単刀直入に言うが、儂はハイトくんとラグナくんの二人の冒険者ランクを特例的に二つずつ上げようと思っている。……つまり、ハイトくんはA。ラグナくんはBランクだな」

「え、Aですか?」

「あぁ。……正直フォレストドラゴンをたった二人――ラグナくんの話だと殆ど一人で討伐できる実力があるなら、Sランクでもおかしくないのだが、Sランクは本部長の承認が必要だし今すぐには難しいのだ」


 申し訳なさそうに項垂れる支部長。


「いえ、十分ですよ! こんなに早くAランクに昇格できるとは思ってませんでしたし!」

「で、でも私もって本当に良いのかしら? 私、本当に何もしてないわよ?」

「いや、寧ろフォレストドラゴンを学生が単独討伐なんて荒唐無稽すぎて信じて貰えない可能性がある。まだ、二人の方が説得がしやすいからラグナくんも功績を受け取ってくれると助かるが……」

「……ハイトはそれで良いの?」

「まぁ、俺としてもラグナのランクが上がった方が助かるかな?」


 ラグナには色々と手伝って貰いたいとも思っているし。


「まぁ、ハイトがそう言うなら……良いけど」


 と、少しラグナが申し訳なさそうな表情をしているが、フォレストドラゴン討伐で冒険者のランクが大幅に上がるのは割と予想の範囲内だった。

 低レベルにおけるフォレストドラゴン討伐の大きなメリットは、多めの経験値が得られることに加え、手っ取り早く冒険者ランクを上げられることもあるのだ。


 JROでもサブ垢を持っている人の間では割とありふれた方法だったりしたのだ。


 それにAランクに上がれば、レイナとの復縁にも近づけるだろう。

 まぁ、レイナは王族だし、流石にAランク程度じゃ有力な貴族の後ろ盾なしに婚約者候補に名乗り出るのは難しそうではあるが。


「それと、フォレストドラゴンの素材の買い取りだが……かなりの金が動くから、少しだけ待ってて欲しい。勿論その分、少し高めに買い取らせて貰うつもりだ」

「それはありがたいです。あ、でも学園の毎週課題で皮は提出したいので、俺とラグナにくれると嬉しいです」

「あ、あぁ、それはもちろんだ!!」


 俺たちの冒険者ランクが上がるのが決まった後はフォレストドラゴンの買い取りの交渉に移る。クエストの依頼達成報酬を合わせると、きっとそれなりの額になるのだろう。……お金が貯まれば、今まで出来なかったレベリングも出来るようになる。

 JROガチ勢としてはかなり心躍る話だ。


 とりあえず、あとは支部長にドラゴン取引の契約書を書いて貰って、俺たちは支部長室を後にする。


 そうだな。帰りがけにステータスの確認でもしておくか。


「ラグナ、俺ちょっと自分のステータス見て帰りたいから先に帰ってて良いぞ」

「そう? 解ったわ」


 そう言って一旦ラグナと別れた俺は、冒険者ギルドに敷設されているステータスを見る水晶に手を当てた。

 レベルは自分でも確認できるけど、ステータスを確認するのは何気に始めてかもしれない。……JRO廃人だったが故に、レベルごとの自分のステータスがある程度解ってしまうから逆に見る機会を逃していたのだが……


 今回は生命樹の果実や種を食べたので、自分のステータスの実数値を確認したかった。


名前 ハイト

冒険者ランク A

職業 農民

レベル 32

ステータス

HP 9290

MP 8290

攻撃力 4500

防御力 4500

魔法攻撃力 3500

魔法防御力 3500

敏捷 750


 普通に鍛えた場合、HPと攻撃・防御の値は『農民』だと実数値にして500の差しか出ないはずなのに、その差は4790になっている。

 つまりそのから500を引いた4290が生命樹の果実・種での上がり幅と言うことになる。我ながら、どんどんJRO廃人だったあの頃のあのキャラのステータスに近づいて言っているのを感じる。


 他はレベル32の農民としては普通のステータスなので言うことはない。


 強いて言えば、フォレストドラゴンを倒してレベル20から一気に32まで上がったことが嬉しいな、くらいだろうか?

 俺は自分の成長に少し満足しながら、また機会があればドラゴンを倒しに行きたいとも思った。


 これだけレベルが上がってれば次回はもっと危なげなくやれるだろうし。


 そんなこんなで、ギルドを後にしようと思ったらギルドの受付嬢のニーナさんに引き留められた。

 ……そう言えば、賭けてたの忘れてた――

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