銀色の指輪と雨がささやいた
あの夜見上げた空の星と風に舞う無数の言葉が散って君を思い出させる光になる気がしていた。お菓子みたいなおかしな言葉が甘くてやわらかくって口をついて出てきたところで詩は死を上書きするほど美しくはないと知った。鳥が忘れてしまった花もまた色を失い散っていく運命だと嘲笑うことで僕だけは暗闇とは無関係のビルの上の高みで日光浴するような心地よさを感じていられるつもりでいたのに。
君の沈黙へ潜る決意は夜より透明だから、朝が来ると無知と無重力と弱い力と強い力に押しつぶされて生きる気も死ぬ気も光に焼かれて失せてしまうんだ。
不器用な僕は火に入る虫のように惨めで情けなくて愚かで弱くて森の木々を見て動かないそれが敵だと恐れてみたり泣いてみたり君のことを思い出してみたりしても虚しくて悲しくて涙がとまらなかったんだ。
偕老同穴、共白髪、永遠を見つけた日の幻想だけが意志とともに震えている。揺れるハルジオンの花の終わりのない疑問が心を支配し、未知の明日を待つ僕にはもう恋と呼ぶほどの思いを抱くことなどないと、あるいはまだ恋してるんだと、知らぬ間に靴を履き、小石を蹴り飛ばし、どこまでも走り続けた。
朝から君と糸とで繋いだ縁を断って労働を言い訳にして、左の薬指にそっと触れて細いねって僕の言葉に意味はなかった。
船を漕いでいった先に待つ君。花火の日に切れた鼻緒は結べばそれで済むはずだったのに。
君の言葉をどう読んでいいのかわからない。まだ終わらない言葉たちがぬるい夜を甘受する。
銀色の指輪と雨がささやいた。
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