優しい夜にくるまって眠る

眠りのなかで羊を追って路地に迷い込んだ僕は

幼い頃の記憶を空に浮かべて

生きた証をひとつひとつ数え上げる


偽りのディスプレイに浮かぶあの夏の熱

触れてみてもすっかり冷めていて

また新しい羊を探して数えて煙に巻いた


東の空に浮かぶ明けの明星が

僕を導いてくれるように思えた

緑の自転車に乗って春を忘れた

自ら夏を迎えに行って裏切られた

あの夏は永遠に

偽りに塗りつぶされてしまうから


過去に屈した蜥蜴みたいに淡い存在の君

冷たい背中ごしに感じた鼓動

どうせ僕は過去にばかり恋してるんだ


我思うゆえに

ときどき憎いと感じる存在としての我

軽やかに歌った君の声

音楽室の肖像画

自由についての話をしようよと

君の少しゆがんだ笑顔


朝を待ちわびる数千数万の星は

僕を避けるように

太陽の光に隠れる

だから僕は

今日も羊を数える


運命にうちひしがれた愚かな猫のごとく

眠る間に物語の結末が過ぎ去ったと知った途端

足に痙攣を感じて歩けなくなった


だから今日も

優しい夜にくるまって

僕は眠るのだ

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