静かに光るそれだけをずっと探していたのに
日陰に落ちた愚痴みたいに輝きを失った金も銀も金剛石も夜の闇に沈めてしまうような思い出だけが愛だったと嘯いてみても女であり男であり不完全であり完全である僕が知るのは春の近づいている確信と冬への郷愁だけなのだろうか。
混沌が君を誘い山のいただきから見上げた夜空の星の数を数えるうちに海辺の泡沫が消えていく儚さばかりを追いかけた愚かさだけが存在証明だなんて馬鹿げがナルシシズムは流れる雲より中途半端な優しさより虚しい憧憬。
穴のあいた傘さして未来覗く君の目に映ったのがあの日のシリウスだったならと五角形に浮かぶ馭者座をつと見て知る不在とともに生きる不自由。
届かないはずなのに生きている継続という言い訳の靴を履いて妬み合う君と僕はどこまで行けるのかって川沿いに歩いてってそんな思い出すらもいつかスーパーノバのような眩い輝きとともに終わるのだろう。
逆さまにしても君は伸びる遠い先にいて世界の終わりのように静かな僕の声をじっと聞いてくれたのにもう隙間を埋める手段は一つもないから諦めてみたらどうだろうかと誰かが頭の片隅で囁いている。
狂ったようにシュレーディンガーの猫にあって欲しいと願ったことすら仕方ないと自分を納得させた。
傷があらわれる深海を泳いでいたらいつしか身動き取れない空に梯子に縛り付けられ少しあと少しと空から降る光は静かに通り過ぎて透明な匂いがあたりに漂いはじめていたのに。
一つが頬に触れた。それが君の笑顔だった。
純情で従順な心に宿る永続性などどこにもアイスを食べて奥歯にシミた悲しみすらもやわらかい体温にすぐに飲み込まれていく。
愚者も知者も命を食らう罪悪感だけが夜空にこだましても最後のかけらだけ光り輝くそれだけに向かって手を伸ばしたら他の光と混ざってどれだかわからなくなってしまった。
君がいない時に風になって星を抱いて眠って夜の孤独と親しく過ごすけれど僕はまだ生きていたんだって知って君が見た空や君が触れた海や君が感じた熱と僕の間にある途切れてしまった過去を取り戻そうともがいているあがいているんだろ。
馬鹿みたい。だよ。ねえ、笑って。笑って。
僕を笑って。
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