涙のあとをたよりに遡行する昼と夜

君の涙のあとだけ光った

たどって歩く足元は暗く

踏み外せば落ちるとわかっていた

睡蓮の咲く池のはたを

君と歩いた夜に似ていた

どこに向かうかなど考えず

手の熱と君の息遣いだけを頼りに

それだけが意味でよかった


ひらけた景色に一本の鉄塔がそびえる

赤と白に塗られた骨組みは

空の青にあらがうように

がっしりと地面を掴んでいる

電波塔だろうか

君の言葉を僕まで届けてくれるだろうか

そそくさと太陽から逃げる僕のくだらない言い訳が

君に届くのだろうか

なんて愚かな僕を僕が笑う


目が痒いと空を恨んだはずの君が

大地を疎んで離れていった

今年から僕も同じ痒みを感じる

目や喉や胸の奥のどこか

時間差の共感の生み出す理不尽が

ずっとむずむずしていて痒いまま

外を歩く

青い空の下を歩く

太陽が眩しいからと目を瞑った

あの日の後悔を繰り返さないために


どうせ君は今日も笑う

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