すみれかおる

熱い手に隠された過去が雪を溶かした

枯れた草が風に鳴るかわいた音と

グラウンドに響く子供の声とが混淆して

光あやなし川面をきらめかせる

君が作った絵本に見た光景に

春を望むには

まだ少し早いだろうか


今年初めての雪

菫の香りを孕むチョコレート

白い街並みを裂く甘さに

期待は身を窄めつつも

秘めた熱は伝わっていた


線路脇の猫の声が聞こえる夜から

春が近いことを知った

川辺を歩く人の手には花束

季節の移ろいを祝う誰かのあとに続いて

今日も僕は君から遠ざかる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る