雪のにおい

降り積もった朝の雪は清くて冷たい

まだ誰も踏まないふくよかな表面を撫でて

こんもり手に抱えて笑む君の頬は

白い世界にただ一つだけある色だった


繋いだ手すらかじかむくらい寒くて

身を寄せて見た湖の上には薄い氷が張った

歩いた途端にパリンと割れる脆さの氷に

青いあおい空が映っていた

海よりも澄んで空よりも冴えて

透明な君はあまりに軽くて浮いているみたいだった


霜焼けた手を包む君の手には血が通う

心の奥から熱が伝う

ただ寂しくて鳴いている犬の

遠くの声に耳を傾けて

愚かだねなんて笑っていたクリスマス


幸福だったはずなのに

満足だったはずなのに

それ以上をいつも求めていたのに

なに一つ得られないまま終わりが訪れてしまうなんて


あまりに君は馬鹿げていて

君のすくいとった雪を僕はいとおしんで

そっと口に食む

甘いわけない透明なにおいは

月の光とみまがうあわい優しさだった

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