迷ってないで泣いていいのに

夏の夜の月に憎しみを吐いても

唾に無様に汚れる驕れる愚かな君は

小さな宇宙に想像力を閉じ込めて

機械のように同じリズムで音を刻む


ルールだけが救いだったのに

譜面に従いミスなく鳴らす鍵盤のうえで

指先はかろやかに踊っていた

誰一人として気にかけやしない

運も才能もないどこにでもいる君は

平凡さを嫌って重力を捨てて星になる


デネブベガアルタイルの輝きの裏の無数の星々

都会の静かな夜空で瞬きも聞こえずに目を閉じて

瞬間こぼれた涙が流れ星だったのだと

愚かな君は疑わなかった

驕れる君は疑わなかった

君は汚れて救われなかった


費やした時間に比例しない人生の価値を

捨ててしまえば自由になれるなんて欺瞞

そらに拐かされてしまった

軽すぎた君の命を

僕は

本当は

地上にとどめておきたかったのに


つまらない道が続く

君のいない道が続く

足の重い日々が続く

梲が上がらない僕が泣くのは

君のいない夜だけと決めたのだ


だから僕が再び泣くことはないというのだ

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