ちかい近い誓い視界にちらつく夏の太陽

かぐわしい香りに誘われた

蝶の揺れる夏の朝

昨日降った雨は

ほんのり空気をしめらせて

祈りのように沈んだ青を

深く長く空へと伸ばす


モノクロ映画のような鈍色の雲が晴れ

高い太陽が蔑むように僕を見下ろす

夏の江ノ島の太陽に狂うように

額の汗が波打って流れ出した


時宜を得ぬ愚者のみが辿る道程

半裸の筋肉質な男たち

やわな僕だけが屋内に逃げ込み

映画の台詞みたいな君の言葉を探す

どんなフィクションにも見当たらない

君だけの言葉と死と詩と


僕を安心させるための雨が降り出した

ただの幻想だと言って夜を泳ぐ君は

絡まる熱と夏の思い出みたいな夜に

美しい光をまといプールに忍び込む


誰もいない学校

小学生のころの記憶の奥

冷たい水

苦しい呼吸



赤いランドセルから時間割表を

抜いて作った紙ヒコーキ

自由への約束かのように

汚れたスニーカーを捨てた

靴はもういらないからと


自由になった君の翼は

少女にしては美し過ぎた

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