君と花火はそこにはないのに

夏の風は静寂に似た黄緑色を密かに孕む

間欠泉からほとばしるように

虫の声と太陽の熱と雨と憂鬱が

断続的に噴き出して

僕らの青春を好き放題に汚した


君を欠いた夏は夏と呼ぶには足りなくて

セブンティーンアイスの自販機の前で

小銭をジャラジャラ鳴らしながら立ち尽くしていた

青年はきっと昔の僕で

君と花火はそこにはないのに


君と無関係な言葉の渦が画面から

漏れ出すように心を侵して

命の儚さ雑音で消してしまう椋鳥の群れが

無数の薄灰色の排泄物で

僕らの青春を好き放題に汚した


アスファルトの表面で光る逃げ水が

僕たち二人の焼けた肌を映した夢

夕暮れと共に消えるそれは

夏とともに消える遠い記憶への憎しみ

君と花火はそこにはないのに



見知らぬ少女の笑い声とこめかみの汗

夏のはじまりには扉がついていないのかと

不満に思った十七の夏の凪いだ夕を思い出して

涙が透明だと知って僕も泣いた


君と花火はそこにはなかった

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