君が生きたことが忘れられた日に

マクスウェルの方程式に魅せられ

波と光と電磁波と磁場と電場に踊らされた

まばゆいばかりの粒子たちの歌をうたう

君がそうしてばらばらになった夏

僕だけが君のことを覚えていた


母校の校庭にぽっかり空いた穴を覗き込み

「ここに思い出があったのにね」とごてる

君はてのひらを強く握り

こぶしを胸におしつけるようにしている

「リニアの速度じゃまだ足りないの」

なんて光速目指してふざけてみて

速過ぎる命は今はどこにあるの


さよならを唱えるにはまだ明るくて

五時のチャイムが近くの学校から聞こえた

懐かしさに涙するなんて君らしくもない

「あたしのなにを知ってるっての」

知らないから知りたいと思ったのに

僕はなにも言えなかった


文明と科学は容赦無く僕らの記憶を貫いた

穴のあいた伽藍堂に神様はいなかった

空から見下ろす穴はいくらか小さく見えるでしょ

僕は諦めて君の帰りを待つ


あまりに青過ぎる空の

夏の太陽が熱い

テレビにうつるうごめくヒアリ

君が触れた日の記憶が

まだ熱いのに

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