浅い命が散った、冬の花火

河川敷を歩く犬の顔をすれ違うたび覗き込んだ

犬には二種類いるという

前世が犬だった犬と

前世が人だった犬という

漫画の受け売り信じて

覗く瞳にいつかの君を探した


綺麗な夜に人々はバラバラになり

花火のように燃える

灰になって散る命は色を失い

久しく輝きからは遠ざかる

あの日寂しげに振り返った君の

髪の揺れる様を覚えている

漏れる息が雲のように白かった


隣に鼓動の聞こえない朝

東の空の記憶が

喜びと悲しみの矛盾に困惑して

紫色の雲を薄く浮かべている

光に流れてゆくこまやかな虫のむれは

橙色の火に飛び込む最期だけ

静かに命の音を鳴らした


トゲを濡らしたバラは

今年も花を咲かせず枯れた

凍てつく風に君は歌った

肌を刺す氷の結晶の美しい幾何学模様を

声で丁寧になでるように

透明な夜を思い出して


我らの軽薄を笑うことなかれ

美しいまま散った君

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