重力から解き放たれた自由を享受する君は

空を颯爽と揺れながら飛び

淡い明け方の薄明を吸って膨らむ太陽のように

速すぎる光の恵みだけが

時の絆を断ち切ってくれるからと言って学校をサボり

夕方の風にまぜた一日の物憂さは闇に沈んで死んだ

斯くして君は

冬至の夜に雪になったのだ


空虚を嫌った君の好きな色が赤だった

夕日のあまりの美しさに絶望して夜をむかえる

あるべき場所に生まれた君は

あらゆる人との世界観の相違に苛まれて

吐いたら空っぽになった胃に

夢だけ詰め込みまた吐いた

蕩尽した生と性のはざまで息した君の

罪悪の証拠と残酷な妄想よりも紅く燃える空の色みたいな

赤いあかい苦悩だけが触れられなかった

夢は毒が強すぎるからねなんて笑う君だけが

僕の希望と絶望を交互に重ねて

甘いあまい黒い夜を

記憶の淵から引きずり出したのに


君の腕から流れる血は蒼く碧く青く

深海に似た息の詰まるような透明さを孕んで

花びらと同じ数だけ生と死を繰り返したのだと

呼吸するみたいに嘘ばかり吐いた青春時代の蹉跌を

宝箱にしまったとかげのしっぽみたいに

今でもまだ大切にしている


僕はいつか君のところに行くから焦りはない

秋風が吹く前に

揺れる振り子が止まるのを悲しむような

道化師の芸当はできない僕は木偶だ

降り積もる泥と土に埋もれて涙も流れない

生の意味を問う君は死で無意味を証明したつもりか

生の意味を問う君の死は無意味な僕に意味を与えた


だから僕は君を許さない

夜の空を仰いで

君をそこに見つけて

何度だって天にむかって

唾を吐きかける

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