空気があまりに透明だから君は

目を覚ましてカーテンを引いた瞬間

外にかすかに夜が残っていることが

僕にとっての救いだった


君が生きたことが

意味のあったことだと信じたくて

泣いた誰かを無邪気に殴った

窓際の花の散った花びらを拾い

グラスの中に浮かべ

香る甘さで

頭をいっぱいにしたかったのに

幻想だとすぐに気づく自意識

ノスタルジーとナルシシズムで

ずぶずぶぐずぐず溺れてたいのに


青すぎる愛の色は案外あわくて

君としたキスだけが

唯一ほんのりピンク色を帯びている

遠くで燃える火の温かさのように

弱くて死にそうで寂しくて

届かないけど

無意味ではなかった

って叫びたい叫びたい

引き裂かれそうな心から逃げたい


空気があまりに透明だから

しんと静かに凍る

君とのあいまいな記憶こそが本物だと

信じるに値する証拠が

躊躇いもなく煙となって昇っていく

遥かに眺めるたまゆらの


君は

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