毎日そこに君がいるから

水族館のガラスの中で佇むペンギンのように

涙で濡れた言葉は坂をすべり落ちて

いつだって君がいるユニクロの前まで流れていくのだ

いくらか存在感が薄れた朝の空気のなかで

君だけが自動ドアに反応しない

星の光は太陽のなかに消えて

来るはずのない迎えを待って

キャリーバッグを股に挟み

過去に抱く悠久に沈む星々の輝きを羨み

いつまでもいつまでもそこに君がいるから


おざなりな謝罪は君には無意味だ

社会を恨んで雨になって蒸気に散った

崩れ落ちた皮膚がかつての自分だったとは信じられる

傷つけられる前に傷つけて

誰も近づかなければ誰も触れなければ

いたくないいたくない

どこもいたくない

どこにも


散った葉が車の風に巻かれて舞うのに

君は蟻くらいにも動こうとはしない

心もまた同じく悲しく

風に靡くこともなく揺れもせず

閉じこもったままキリキリと孤独の音を鳴らしている


夜寝る場所とその日食うもので十分

完成した要塞のやわいところを突き破る

性欲と快楽との境界線上に沈み込んだプレートが

君以外の世界をすべて破壊する

なんてことは起こらないのだ

起こらないのだから

土の下に探す安らかな時間を

君だけの群青を

もっともっと深くまで探せばいいよ

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