花火、夏の夜が過ぎ、赤いガラス

赤いガラスの糸みたいに脆い

それだけが僕らを繋いだ


夏が終わるのは

君と花火を見たせいだ

と言い訳したから

いつまでも夏が終わらない

君と花火を見ることはもうない

空虚なディスプレイに浮かぶ

色彩に満ちた偽りの夏に

何度も触れた

赤いガラスの糸みたいな

脆い記憶を探してる


濡れた地球に素手で触れ

くすぐったいって笑って

くるって回って

いつのまにか君がそこにいた夏の夢を見て

袖が濡れて重くなる

振る暇も触れる暇も乾く間もなく再び濡れ

天地がくるりとしたように

生と死がくるりとするのを待ちながら

今年も花火は上がらない



水蓮の葉を跳び

池に落ちる君は優雅に

足がすくむ僕を嘲笑う

夏の夜を水ぞこに隠したまま

みなもに戯れに揺れ

不安定な睡蓮が傘のようにひらき

君のいた過去をいだいている

死が色づく

夏の夜の薄紫の君の肌は

まだ水ぞこに沈んでいる


アスファルトに削られ散る

火花を黒が飲み込む

秋が昨日来たのだと

誰かが僕に教えているのだ

君が消えたあとの秋の

夥しい数の石榴が降るみたいに

夕焼けが雨を照らして綺麗だった

記憶と重なるこの場所が

今年も静かに赤く燃えている


揺れるススキの向こう側の君

君にだけ通じる言葉を探していた

揺れるススキが邪魔をする

君が見えない夏が遠い

線香花火はまだ

地面の上で熱いや


けど

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る