永遠に似たなにかと夜と

深夜二時に見上げる天井

木目模様に見つけたシミュラクラ

君の亡霊がそこに立つ

陶磁器のような肌を割って

溢れる血だけが生きている証拠だから

刺したかったのに

もう叶うことない僕の望み


想像力だけ糧にし生きる

僕らのつくりあげた王国

あったはずの色をなくした

モノクロの夜

永遠に憧れ海底に沈んだ都市が

浮上するのを不毛にも待つ


秋の夜に欠けたままの僕は

淵に流れ着いた枯葉と同じくくるくる回る

藍色の夜よ助けてよって

声も今では届かない


明日から僕は光らない太陽となり

不確かな亡霊の影を焼く

青だけが藍に似て

金属質な熱気と冷気を宿し

夜と永遠とを混ぜ合わせた

誰もが欲しがったはずの君で

誰も手にいれることのない君だった

君を君の記憶を僕は

太陽になって焼き尽くす


さよならのつもりで手を振った

一九九九

七の月

対岸で君は泣いていた


記憶が甦っては僕に語りかける

絶望は火を焚き

心臓を焼いて食ってくだらない夢に変える

ふとした瞬間君が笑った

理由も忘れて笑い転げた


回転する車輪の速度は限界を超え

終わりばかりを願っていた

生き物への嫉妬を抱く無機物たちは

何度でも残酷なほど

君の上を通り過ぎて

ずたずたになった追憶の破片すら

もう触れられないほど惨めだった


何回目の人生を生きているのって

気軽な調子で尋ねる君は

道に落ちて死んだスズメバチのように

鮮やかな黄と黒の縞模様で

他者の恐怖ばかり膨らまして

既に死んだはず毒針で

たっぷり愛を注ぐのだろう


愛するのに生は必要ないのだ

とかいって笑って

笑って君は無邪気に愛を注ぎ込む

必要ないのだといって

毒でもアナフィラキシーショックで死んでも

笑って君はもっと笑ってよ

笑ってくれたってよかったじゃないか

遠い永遠と君と夜


朝が訪れ夢が昇華する

だから僕は茎を折った

リコリス・ラジアータの

頼りないそれを

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