地図にない道を歩くにおいて欠かせぬものたち
1
押し入れの奥から引っ張り出した
カンテラの火は
思いのほか赤く
欠くべからざる方向を指し示す
羅針盤のごとく
三丁目の公園の滑り台のしたで照った
水溜りに半分浸かった長靴には
三年前から穴が空いていた
空には深く黒く穴が空いていた
ずっとそこには
青だけが隠されていると思っていたのに
雨は降るのだ
2
雲になることに決めた君は軽やかに飛んだ
煙突から天に伸びた
白く宙をただようそれは
蜘蛛の糸のようにほんのり粘り気を帯び
夜の電車のにおいと似て
僕の嫌悪が
記憶と思考を絡め取っていく
歩く老いた犬の
足取りは重く
よく鳴いたあのころの面影を
かすかに残し
そろそろ君と
同じ場所へおもむくことが
羨ましくはないけど
恨んだのだ
3
憎悪と愛情は紙一重だ
と
したり顔で語る彼らとは一線を画し
ティッシュを繊維方向に裂いて
意味もなく
何度もゴミ箱に捨てた
幾重にも重なる
白いしろい
昔は木だった
かもしれないそれは
きっと意味もなく
燃やされるのだ
灰になるのだ
君になるのだ
4
郵便ポストの赤を真似て
西の空に光る一番星を見つけた
指先の少し
染まった色は
夜のせいで
藍に飲まれて溺れて
いつか消える
道標もなしに
終焉に向かう未知を歩く
道すがら
だから
君は泣いたのだった
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