地図にない道を歩くにおいて欠かせぬものたち


押し入れの奥から引っ張り出した

カンテラの火は

思いのほか赤く

欠くべからざる方向を指し示す

羅針盤のごとく

三丁目の公園の滑り台のしたで照った

水溜りに半分浸かった長靴には

三年前から穴が空いていた

空には深く黒く穴が空いていた

ずっとそこには

青だけが隠されていると思っていたのに

雨は降るのだ



雲になることに決めた君は軽やかに飛んだ

煙突から天に伸びた

白く宙をただようそれは

蜘蛛の糸のようにほんのり粘り気を帯び

夜の電車のにおいと似て

僕の嫌悪が

記憶と思考を絡め取っていく


歩く老いた犬の

足取りは重く

よく鳴いたあのころの面影を

かすかに残し

そろそろ君と

同じ場所へおもむくことが

羨ましくはないけど

恨んだのだ



憎悪と愛情は紙一重だ

したり顔で語る彼らとは一線を画し

ティッシュを繊維方向に裂いて

意味もなく

何度もゴミ箱に捨てた

幾重にも重なる

白いしろい

昔は木だった

かもしれないそれは

きっと意味もなく

燃やされるのだ

灰になるのだ

君になるのだ



郵便ポストの赤を真似て

西の空に光る一番星を見つけた

指先の少し

染まった色は

夜のせいで

藍に飲まれて溺れて


いつか消える


道標もなしに

終焉に向かう未知を歩く

道すがら

だから

君は泣いたのだった

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