のけもののけもののきもの
1
動物を知らない
僕は鳴いた
ヤギのように貧相な声は
空を劈き
隙間から涙があふれた
夜になれば
流れ星が空から滴り落ちるから
顔を洗って明日を待つ
そうして君はいつも死を遠ざけて
朝と再生の循環を
感受して生きるのでしょ
愚かな君を
神様
許してよ
2
傷口からはいつまでも
ケチャップみたいに
命がこぼれていく
塞ぐように
青い衣を纏って
しいと指をくちびるにあて
静かに囁く悲鳴のように
泣いた
ないた
ないた
海みたいに
静かな海みたいに
僕は
君みたいに
泣いた
3
死んだら星になると
信じてる君は
髪に染み付いた油の匂いと
夏の匂いが混ざるところで
懐かしい花火の光が消えゆく夜に
つぶやく
飽和水蒸気量を超えて
交換され続ける言葉の数々は
常にからっぽだった
太陽の匂いが浮きたって
好きだって言って
宙で花になる瞬間の嘘が
誰かの助けてという言葉をかき消して
美しさで彩ってしまう
それでも君は
つぶやく
青い鳥のように
空に溶けてしまうとしても
4
死は醜いし僕は醜いし
美しさは疎ましいけど
僕は君を
生きるのです
桃源郷に生きた獣たちは
殺すことを知らない
蛍が
透明な水を求めて飛ぶように
立ちのぼる霧のなかから現れた
虎の群れは
ガラス窓の上を
優雅に歩く
白い夜
暗い雲
同じ色彩で
感情の降り積もった道は
どこかで途切れる
君は
その延長上に
いるのだろうか
5
日常に埋もれた
可愛いを消費し尽くし
君の好きな猫たちは
そうして
何度も何度も殺された
殺したのは
君ではない君ではないきみ
死んだはずの夜に
花をつんで供え
美しくなんてない
千切れやすい紙のように
艶やかな毛の表面を
優しく撫でた記憶を
そうして僕は閉じ込めた
可憐な振舞いは
愛にも似た
赤い赤い血の残酷さが滲む
過去から現在
さらに未来へと
砕けた炎のかけらで
君と一緒に
きっと
消えてしまう
夢の中だけでしか
もう会えないというのに
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