結晶の砕ける音を聞いたら外へ

無垢な子供の叫びのような

甲高い響きと

昇華した酒の刺す香りを

汚辱にまみれた今日とともに

置き去りにして眠る鳥たちは

光る過去ばかり集めて

大切にしている


街に満ちた熱に本物は一つとしてなく

内緒話のような声をひそめ

羽虫たちの死が

蛍光灯の光と共に降り注ぐのだ


だから


僕は

ずっと待っていた



その夜から眠れない

黄昏時に摘んだ

名も知らぬ花と寄り添い横たわり

攻撃的な愛憎の臭気を嫌悪し

終わりに咲きほこる

湿り気のある愛だけを食べて生きる

と決めたから君は死んだのか


明日という言葉を

真っ赤のポスカで塗りつぶしてさ


だから


僕は

ずっと待っていた



内臓の浮くときの

自分だけがそこにいない感覚

降参するまでもなく吐いた言葉は


君だけが知っている


無造作に枝から落ちる

葉や花に同情するように

よるべなく夜に鳴く鳥たちは

帰る住処を

とうに忘れたのだった


だから


僕は

ずっと持っていた


君だけが知っている夜の歌が

空気を震わせ踊り出す前に

息を止めてよ


君の声が聞こえない

君の声が聞こえない


僕は

いつまでも君を待つから

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