夜は潮のにおいがするから

眠りこそが至上の喜び

と断言するには

十六歳はまだ早い


雨の匂いが好きだ

と言った彼女は

今では空で直に匂いを嗅いでる


宿命にあらがうのも運命を感じるのも

あらゆる君とあらゆる僕だけ

二者関係の単なる闘争と逃走

には

もう疲れた

なら

走らなければ良いのに

もう走らなければ良いのにさ


再び眠りに誘われ

何度も仮想的な死を求めるのは

僕が死にたいからではなく

君が死にたいからでもなく

君の死を僕が死にたいからだった


自分が自分であることを受け入れられず

切り離したそれを空に投げたら

星になった

そういう物語だけを求めて本ばかり読んで

活字ばかり追いかけて食べて

人の心は空気は

読めない活字の獣になりました


海は人を引き込むから

ばあちゃんが言ってたっけか

一点に収束した現実と

可能態としてのそうならなかった世界を

波の狭間に見出す


遅れた朝が役に立つとか立たないとか

価値があるとかないとか


愛を問う不遜を許せぬ神は


きっと

僕と君に

罰をくだしたんだ

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