開拓村のどうぶつふれあい騎士 ～欠けた開拓地のそこそこ平和な日常～

よく晴れた開拓村の昼下がり。

　どうしました？

　こんな天気のいい日なのに、そんな木陰に隠れて。

　いや、不審者がいたら声をかけますよ。

　これでも兵士ですから。

　で、なにやってるんです？

　静かに？　邪魔しないように？

　あっちになにかあるんですか？

　あー。

　なるほどね。わかりました。

　竜騎士様と、獣騎士様ですね。

　お供の子たちも。

　お二人とも今日は非番だったと思います。

　竜騎士様は、相棒の飛竜の子と並んでお昼寝中みたいですね。

　ぐっすり寝てるように見えますけど、飛竜の子の頭にのせた手がゆっくり動いてるようです。

　竜騎士様はいつも飛竜の子を可愛がってますが、夢の中でも頭をなでてるんですかねぇ。

　獣騎士様は、使い魔の子らの毛づくろい中みたいです。

　今はクマさんの番ですか。

　寝そべったクマさん、気持ちよさそうに脱力してますねぇ。

　横にいるキツネの子とリスさんは順番待ちかな。二本のしっぽがふりふり揺れてます。

　あなたの言うとおり、お休みの邪魔をしてはいけませんね。

　さ、離れましょうか。

　え？

　やだ？　もっと見てたい？

　まあ、気持ちはわからなくもないですが。

　尊（とうと）い？　

　すみません、そっちはよくわかりません。

　そもそも言葉の使い方が間違ってるような……。

　確かにあのお二人は開拓騎士団の正騎士ですから、地位があるという意味では尊いお方だと言ってもいいのかもしれませんが。

　え、そういうことでなく？

　ああいうものを尊いと言う？

　あの光景は素晴らしいと。

　それはまぁわかります。

　普段はキリッとした騎士様たちが、ああやってお供の子たちと仲良くしてるのを見るのは、なんというか。

　なごみます。

　癒しになるというか。

　あなたもそう思うと。

　素晴らしすぎるほど素晴らしいと。

　素晴らしすぎて、素晴らしいという言葉ではもはや足りない？

　それが、尊い、という感情であり表現だと。

　うーむ。わかるようなわからないような……。

　あ、クマさんの毛づくろいが終わったようですね。

　クマさんが起きて、獣騎士様の後ろに回って、抱き着きました。

　獣騎士様の髪にクマさんが顔をうずめて、なんかもぞもぞしてますね。

　あれはクマさんなりの毛づくろいなんでしょうか？

　立ち上がったキツネの子が獣騎士様の膝に乗って、寝そべりましたね。

　次はキツネの子の番のようです。

　目を閉じてますが、耳がぴくぴく動いて、しっぽがぴーんと立ってます。

　あの金色のしっぽ、きれいですよねぇ。自分もさわってみたいなぁ。

　微笑んだ獣騎士様の指がしっぽの根元に伸びていって……。

　あ。聞こえました？

　今、きゅぅんって言いましたよキツネの子。

　可愛いなぁ。

　座ったままのリスさん、しっぽの揺れがだんだん速くなってますね。

　待ちきれないのでしょうか。

　あ。獣騎士様がなにか取り出しました。木の実かな？

　左手でキツネの子のしっぽをさすりながら、右手の木の実をリスさんのほうに伸ばしていって。

　リスさんが顔を前に出しました。

　獣騎士様の手から直接木の実を食べてますね。

　口をもぐもぐさせるリスさん、目を細めて嬉しそう。

　あら、木の実がもう全部なくなったようですね。リスさん食べるの速い。

　獣騎士様がリスさんの頭をなでようとしてー？　

　お、リスさんが獣騎士様の右手を両手ではさんで止めた。

　あー。その手をなめ始めましたね。

　木の実の味が残ってるのかな。

　獣騎士様がくすぐったそうに笑ってます。

　なるほど。

　あれが、尊い、ですか。

　自分にもだんだんわかってきた気がします。

　あ。飛竜の子が目を覚ましたみたいですね。

　身体を起こして、隣の竜騎士様の顔を見てます。

　竜騎士様はまだ寝てるようです。

　どうするんでしょうか。

　あ、飛竜の子が舌を出した。

　騎士様のおでこをひとなめしてー。

　反応ありませんね。

　次に目と鼻をひとなめしてー。

　まだ反応ありませんね。

　あーあー。

　すごい勢いで顔全体をなめ始めましたよ。

　もうべろんべろん。

　あーあーあー。

　どうでしょう。

　あれは尊いですか？

　ちょっと激しすぎる？

　自分もそう思います。あそこまでいくと、ちょっとねぇ。

　え。でもあれはあれでアリかも？

　そっかー。

　うーん。尊いってなかなか難しいです。