「お。起きたか」


全身がいたい。身体の右側が、重い。ただ、気分はわるくない。


「生きてる」


「ああ、生きてるな」


上司。


「病院ですか?」


「ああ。駅前じゃなくて、三日目村のほうの大病院だよ」


よりによって、設備のいいほうに。


「余計なお世話だったな」


「死にそこなった」


「しかも、重たい荷物つきでな。せいぜい仲良くするんだな」


上司が去っていく。

身体の右側。重い。


「あっ」


変な声と共に。身体の右側が軽くなる。それで、胸の重さだと分かった。


「起きっ。起きたっ。起きましたかっ。ナースコールを」


「いや、ナースコールは、やめてください」


「え、でも」


「もう少し、このままで」


「あ、はあ」


彼女。ボタンに手をやったまま。


「あの」


「はいっ」


ぴくっと反応した。かわいい。


「重石がほしいです」


「重石?」


「さっきみたいに。右側」


「あ、ああはい。こうですか?」


身体の右側。また、重くなる。


「キスもしますか?」


「あれ。思ったよりも積極的」


「あの。わたし。普通じゃないものに出会ってしまって。なんか、おかしく、なっ。いや、えっと」


「じゃあキスしてください」


「え、やっぱだめです。だめ。はずかしい」


「じゃ、そこの、上司が置いていったフルーツを。ください。いちごとか、そこらへんを」


強引に口にねじ込まれる。

甘く柔らかな、炸裂。


「もごご」


そして。

その上から。

唇。

キスになるかと思ったけど、普通に噛まれた。


「いだい」


「あっごめ、ごめんなさい。キスとか、したことなくて」


「いちご。もうひとつください」

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甘く柔らかな炸裂 春嵐 @aiot3110

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