第8話 ENDmarker 2.

「ねえ。なにこれ。ちょっと。ねえ。大丈夫っ」


「あれ。おかしいな。生きてる。いてて」


「動かないでっ」


「あ、気にしないでください」


「後輩なのに。ちが。どうしよう。うでが。あしが」


「いいんです、べつに。血も、腕も、足も。もういらない。死にたかったので」


「そんな。後輩が初日に」


「いいえ。後輩とかじゃないです。俺は全然違うというか、外部からこの会社の狐を狩りに来た正義の味方で、いや、違うな。ただのわるいやつです。死ぬんで。気にしないでください」


「どう、いう、え、わからない。何も分からない」


「月明かりが綺麗だなあ」


「え、し、止血。止血を」


「いらない。いりません。雑談に付き合ってください」


「だめ。とりあえず血を止めなきゃ」


「じゃあ、それでいいです。俺が死ぬまで。話を。しませんか」


「うう」


「あ、服は」


胸が。


「え。そんな。性別が」


「訊かないでくれ」


「あ。ごめっ。ごめんなさい」


「服を返せ」


「それはできません。血を、止めな、きゃ」


「これを見られるぐらいなら、舌を噛んで死んだほうがましだな」


「あっ待っ」


「ん」


「ぐぅっ」


「おい。腕でガードするな」


「これ。わたしの。わたしの服。あげます。あげますから。これで胸見えない。大丈夫。いたた。舌も。かまないで。ください。腕。腕噛んでいいですから」


「はあ」


「よいしょ。血が。止まらない」


「あなた。人から認識されてない」


「あなたじゃない。先輩。先輩です」


「先輩。生きてて、楽しいか?」


「たのしいです。普通の人生が」


「そうか」


「うぐっ」


「嘘をついたら噛むかな。腕」


「うそです。普通の人生がいや。なんでわたしだけ。普通の檻から出れないの。わたし。わたしは。普通に生きていたいのに。普通がいや」


「そうか。普通の檻から、連れ出してやりたいところ、だけど。俺がこの世からいなくなる、ほうが、先、みたいだ。じゃ、元気、で」

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