第252回 なぜか一対一の状態になっているような―…
「どうした、各田十言、かかってこいよ。」
と、乱堂が俺に向かって、大声で叫ぶように言う。
本当に―…、待つということがちゃんとできないのだろうか―…。
それでも、動かないことには何も始まらない。良いことにつけ、悪いことにつけ。
俺は、乱堂に向かって攻める。
俺は、能力のおかげで、神と王以外の人を殺すことができないし、そのような攻撃をした場合、全部が無効になるか、殺さない程度までのダメージになるかである。
どうやって判断されているのか基準に関しては、まだ分からずじまいだが―…。
俺は長剣を構え、乱堂に斬りかかる。
「動きが単純だな。剣道をやっていた者の動きじゃないし、剣での戦闘者の動きじゃない。
独学でやったものか―…。それでも、筋自体は悪くはない。
ふう~、その攻撃によって、俺が斬り殺されることはないということぐらいは把握済みだ――――――――――――――――――――――――――――――。」
また、叫ぶのかよ。
そして、乱堂は自らの武器というものを今は持っていなかった。
持たずに神力でのみ戦うということであろう。
「神力 神壁。」
と、乱堂が言うと、乱堂の目の前に透明な壁が展開された。
そして、俺はそれに斬りかかり、「神力 神壁」に長剣が接すると、見事にそれ以上、進むことができなかった。
防がれた。
まあ、この「神力 神壁」が防御のための技なのではないかということぐらいは簡単に予想することができた。
俺が攻撃し、乱堂が守る側であるという状況なのだから―…。
「ふん、神力で防御することは可能ということか。各田十言は、守りに特化しているということか。
でも、攻撃を当ててないから本当にそうかわかっていない。
じゃあ、実際に喰らってみたらどうなのだろうか。」
!!!
乱堂が今の言葉を言い終えると、消える。
いや、そのように見えただけかもしれない。そうだ。
そして、俺の目の前に再度、姿を現わす。
「もう防御の体勢をとっても意味がない。」
エッ!!!!
「ガァ…ハッ…。」
俺は腹部に物凄い衝撃―…、いや、表現としては正しいが言葉にできないというのが今だ。痛いなんて概念をこえてしまっている。
そして、俺は乱堂に右手のパンチを喰らい、後ろへとぶっ飛ばされるのだった。
「フン、攻撃は効くのか、何が神や王以外で殺せないか。嘘じゃないのか。」
この時の乱堂の表情を理解することはできないし、言葉も聞こえてしまったというのが正しいだろう。
美愛、夏鈴、那留、羽奈が叫ぶ声が聞こえるぐらいだ。声のみで言っていることはわからないが―…。
ガァ…ァ…。
何度かの衝撃がはしるのだった。人生でこのような痛みというかダメージを受けたのは初めてだ。
その痛みというものは、続く。
だけど、ここで痛いとか言って倒れるわけにはいかない。倒れてしまえば、美愛、夏鈴、那留、羽奈という俺の彼女が殺されてしまうかもしれない。
そんなこと俺が生きているうちも、死んでからもさせない。
神の平穏のために、奪われていい命なんてあってたまるかよ。
俺は、無理をしながら立ち上がる。
「おいおい、ボロボロじゃないかよぉ~。もう一発喰らった方が楽に安住の地に逝けるぜぇ~。」
乱堂の声?
もう誰の声かわかりやしない。
それでも、守るべき大切な人たちがいる限り―…。
「回復。」
夏鈴の声が聞こえる。
俺は夏鈴の技で回復するのだった。
そして、視界をしっかりと確保できるようになる。
「さっきのお返しといこうか。
魔防 神力拒絶。」
俺がそういうと、俺に向かってきていた乱堂は後ろへと弾かれる。
そして、乱堂はすぐに体勢を整え、叫び始めるのだった。
「ダメージを受けたら、反撃しやがったか。それにしても、死ぬほどではないダメージが場合によっては、一発気絶で倒される可能性が存在するのか。
厄介だぜ。
各田十言―…、お前の実力はしっかりと把握させてもらったぜ!!」
「そういうことね。」
と、ふと乱堂の上に美愛がいて、槌を構え、攻撃をするのだった。
「圧槌 重力槌撃。」
「おいおい、やばい奴じゃねぇ~か。」
乱堂は、動揺するのだった。
それでも、乱堂以外のイプセンとかいう人物が乱堂の目の前に姿を現わす。
美愛も気づいたようだ。
「その一撃はかなり強そうですね。渚山那留がスピード、各田十言は防御、風凪夏鈴が治癒、そして阿久利美愛はパワーですか。
だけど、私の力で、ちゃんと抑えることはできる。
重力ですか。ならば―…。」
と、イプセンは言いながら、少しの間、間をあけ、言い始める。
「神力
美愛は槌を振り下ろすが、そこに重い重力が発生しなかったのだ。
「!!!」
美愛は驚く。
そりゃそうだ。イプセンは、美愛の槌の攻撃の重力を取り除いたのだ。
そして、イプセンは簡単に美愛の槌を手で受け止めてしまう。
すぐに、美愛は自分がどういう状況になっているのか気づき、距離をとるのだった。
その時、美愛に隙が生じていたが、イプセンは攻撃をしてこなかった。
それは、羽奈がイプセンに向かって拳銃の一つを構えていたからであろう。
そして、俺たちは近くに集まるのだった。
この上位主導者たち、俺たちが思っている以上に強い。
だけど、なぜか一対一の状態にしようとしているし、俺たちを倒せるチャンスがあるのにどうして実行しようとしない。
何かあるのは確かだ。
今は、撤退に追い込むのが精一杯といったところか。
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