第251回 突風の初撃

 俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は、警戒する。


 戦いは、始まろうとしているのだから―…。


 「言おう。すでに戦いは始まっている。

 そして、すでに、攻撃は始まっている。」


 鷹のような目をしたリー=ウーロンが淡々と言う。


 ゴッドフリート=イプセンの言い方と、印象が大分違ってしまう。


 ウーロンは冷徹であるが、それでも、仲に熱さというものを表面からは感じてしまい、イプセンは、冷徹さしかなく、関心すらないのではないかと思ってしまうほどだ。


 そして、ウーロンの言葉は、俺たちにすぐに、襲い掛かってくる。


 突風が俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈に急に降り注ぐのだった。


 グッ!!! いつの間に!!!!


 予備動作すら、技名を唱える時間もなかっただと!!!!!


 どんだけ強いのかよ、それに味方には一切の風が吹いていない!!!


 こいつの実力は俺たちでもかなり苦戦する。


 ほんの数秒で、突風が続くが、それもおさまる。


 「ほお~、ウーロンの初撃を耐えるか。ノーダメージ。

 実力はあるようだな。勇者阿久利正義や神信会うちのところの日本本部大使を倒すだけのことはあるわぁ~。

 英雄がどうなったかわからず、各田十言たちが生き残っている以上、英雄は倒されたと考えたほうがいいだろなぁ~。

 そう考えれば、今のような結果は事実。

 なら~、この乱堂様が先陣をきらせてもらうぜぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」


 乱堂が叫び出して、こちらへと攻めてくる。


 冷静に分析できるんだな。人のことを馬鹿にして、見下しているわりには―…。


 こういうのは、厄介なんだよなぁ~。


 それでも、倒させてもらうのだけどな。


 俺は、乱堂に向かって行き、自らの武器である長剣で乱堂の攻撃に対して防御できるようにするのだった。


 「へッ!!! 面白おもしれぇ――――――!!! 挨拶がわりに防御してみろよ、各田十言!!!!!」


 普通、別の奴に攻撃して、俺を撹乱してくるのではないだろうか。


 何で、俺へとそのまま攻撃してきているんだ? 疑問だ。


 それよりも、今は乱堂の攻撃を防御するのが先だ。


 「神力 加護に守られし者の一撃。」


 乱堂がそう言うと、俺へ向かって、パンチ攻撃をしてくるのだった。


 俺は、その軌道でどのような位置で俺に当たるのかがわかったので、その軌道上に長剣を構えるのだった。


 乱堂は、この場合、軌道をわずかに変えても、俺に攻撃を当てようとするのであるが、それをせずに、堂々と俺の長剣に自らの拳を当てるのだった。


 「へえ~、なるほど。これじゃあ、神と王以外は各田十言を殺すことができないわけだなぁ~。

 まあ~、それもこの長剣という武器があるからと考えるべきであろうし、周囲の神力が無力化されていたことに対して、その原因である各田十言を訴えていた件もあることから事実か。

 それでも、できないと感じさせるだけで、新たな方法を開発して、その条件をなくすことも可能というわけかぁ~。

 まあ、これは可能性でしかないけど―…。」


 「その可能性が完全に確定されることのないようにしないとなぁ!!!」


 と、俺は、乱堂を長剣で弾く。


 暴言を吐きそうなことばかりな性格をしてそうなのに、冷静に分析してくるとは―…。さすが、神信会の中でも実力者ということか。


 油断はできないのは事実だ。


 「フッ!!! 攻めてこいよ。今度は俺がお前の攻撃を受けてやるよ。」


 と、乱堂は右手の人差し指をあげ、クイッ、クイッ、として挑発してくるのだった。


 本当に、挑発のプロだなぁ~。安っぽいキャラに感じてしまうが―…。


 「十言先輩に攻撃して、侮辱してくるのはお前の口か―――――――――――――――――――――――――――――――!!!」


 と、那留が叫びながら、高速で移動しようとする。


 それも、乱堂に向かって―…。


 那留…、もう少し冷静になろうか。


 と、俺が思っている時、那留に近づく影が一つあった。


 「お嬢さん。一対一の戦いに邪魔してはいけないなぁ~。お嬢さんの攻撃は俺が受けようか。」


 いつの間にか、テプテプとか言われる肌が黒い人が那留の目の前にいたのだ。


 なんて移動速度だよ。


 俺が見た中で、一番のスピードではないかと思う。


 身体能力もかなり高そうだし―…。


 「那留!!!」


 俺は、那留に向かって叫ぶ。


 テプテプは、那留に向かって攻撃しようとしていたのだから―…。両手にダガーを持って―…。


 「十言先輩、私のこと―…!!!!!」


 と、那留も気づいたのだろう。


 テプテプの攻撃に対して、防御の体勢をとるのだった。


 「ほお~、俺のスピードについてこれるとは―…。お嬢さんは、優秀なようだねぇ~。

 だけど、まだまだだねぇ~。」


 と、テプテプはそう言いながら、攻撃するが、那留もその攻撃を手に魔力を覆って、何とかダガーによる攻撃を防ぐのだった。


 「ふむ、防御力もそこそこあるみたいだ。」


 「テプテプお前の攻撃力が低いだけだと思いますけど―…。」


 「言ってくれるねぇ~。でも、互いに少し大人しくしておいた方がいいよ。だって、お嬢さんが攻めれば、俺やそれ以外の上位主導者が君を狙うからねぇ~。」


 「!!!」


 と、テプテプと那留双方に距離をとるのだった。


 その方がいいだろう。


 戦うと言いながら、明らかに、一斉にかかってこないのだ。


 明らかに怪しいが、目的を今のところ理解できない以上、冷静に戦っていくしかないし、攻撃を守りに重点を置かざるをえない。


 上位主導者が五人で俺たちも五人だが、合計した実力は若干であるが上位主導者の方が強いように思える。


 一番不気味なバルドーンが何をしようとしているのか、それとも何かを見ようしているのかわからないのだから―…。


 乱堂の性格を利用している点だけは事実だろう。


 こっちもなるべき手のうちを見せないようにしよう。


 そう、心の中で思うのだった。

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