第250回 そういうことで戦いになるのでした

 乱堂が戦いを始めようとして、動き始めるが―…。


 「まあ、遺言としてですか―…。それよりもこっちの自己紹介をしてもいいか。」


 と、俺が提案する。


 なぜなら、向こうに自己紹介をしてもらったので、こっちが自己紹介をした方が良いだろう。


 向こうが名乗って、自分たちが名乗らないのは良くないと思うからだ。


 それに、向こうは俺たちのことを知っているだろうが、一応、形というのにもこだわっておく必要があるだろうから―…。


 「はあ!!! テメー、馬鹿なのか、こっちはお前らのことを知っているのだぞ、今更、お前らの自己紹介なんか!!!!」


 と、言いかけたところで、さっきは会話を邪魔した乱堂が邪魔されるのだった。


 「乱堂!!! 折角、向こうさんが自己紹介をしてくれるのだから、させてあげなさい。」


 「チッ!!」


 と、ゴッドフリート=イプセンが言うと、荒神乱堂は大人しくなるのだった。


 「すみません。乱堂は、場の空気を読むことが苦手のようでして―…。私は、各田十言にも礼儀というものがあって、安心しました。

 では、自己紹介をどうぞ。」


 イプセンよ、上から目線のような言い方をするなよ。


 俺だって、礼儀は少しぐらいは知っている。


 そして、俺は、美愛、夏鈴、那留、羽奈と話し合うのだった。自己紹介の前に―…。


 「上位主導者。私も会ったことはほとんどないけど、神信会の中で信仰長や重要役職以外を除く主導者の中で神力の扱いおよびその戦闘力が高い五~八人が選抜された人たち。

 実力は、たぶん英雄、真の勇者と互角と言っていいかもしれない。

 とにかく、数の関係で私たちの方が不利かもしれない。全員で相手することも必要になることもあるかもしれない。」


 夏鈴が説明してくる。


 夏鈴は、神信会の聖女であったことからその内情について、俺らの中で一番詳しいからだ。


 「そうなると、連携に綻びを入れるわけにはいかない、ということか。なら、那留が攪乱で、美愛が重要なところでの一撃、夏鈴は付与で相手の動きを封じたり、弱らせて、優位になっているところを羽奈で動揺を誘う。後は、俺が適宜、防御ってところだな。」


 「それでいきましょう、十言君。」


 「うん、十言、そうしよう。」


 「十言先輩の仰せのままに―…。」


 「十言っち、それでいくとしましょう。」


 と、簡単な話し合いを終え、自己紹介に入るのだった。


 「俺は各田十言だ。平穏を望んでいるのに、そんなことを言ったとしても聞いてもらえず神信会に命を狙われてしまったため、それを対処し、俺の平穏を守るために、神を倒します。仕掛けてきたのはそちら側ということだけを付け加えておく。」


 俺の自己紹介をし終えると、美愛、夏鈴、那留、羽奈の順番でなされていった。


 「私は阿久利美愛です。兄に魔力因子を持っているからという理由だけで命を狙われ、その兄も神信会の真の勇者に殺され、家族も全員殺されました。

 なので、家族のために、神信会と神に対しては、二度と私の命を奪えないように、倒したいと思います。」


 「同じく風凪夏鈴です。神信会で聖女の役職に就いていましたが、聖女になる儀式が酷いもので命の危険しかなかったので、十言の側につくことにしました。

 私、討伐対象にされてしまったので、神に関しては倒す対象にしました。なので、さっさと倒されろ。」


 「同じく渚山那留です。十言先輩の幼馴染で正妻ということになります。十言先輩とのイチャイチャと人生の添い遂げ計画を邪魔してくるので、二度と十言先輩の命を狙わせないようにしないといけないなぁ~と思います。」


 「同じく夜見羽奈です。父が神に洗脳されて、私の母を殺し、私を狙ってきたので、その元凶は大人しく滅べ。」


 自己紹介としては、いいんじゃないだろうか。


 味方とか、親しくなりたいと思えば、こんな自己紹介は絶対にしてはいけないだろうが、敵であり、かつ、俺たちを殺そうとするので、嫌味たっぷりなぐらいな方がいいだろう。そうしないと、こっちのストレスが溜まってしまいそうな感じがするから―…。


 「うわぁ~、俺らの属している組織、相当に恨まれてるよぉ~。まあ、命を狙っているのだから、しょうがないことだけど―…。」


 テプテプとかいう人が言う。


 まだ、俺たちが恨む理由を理解できているので、人としてはしっかりと他者のことを理解できるのであろう。


 「はあ~、何、俺らの属している組織を恨むのわけわかんねぇ~。こいつら、自分が何の罪を犯したのか理解していないのかよ。

 神に平穏をもたらさなかった。いや、神の脅威にしかならない。それだけの重要な罪を犯しているし、死に値するのは十分な理由だろ。

 それを理解して、潔く自ら命を絶てばいいはずだ。

 やっぱり、魔力因子開花者と神を滅ぼす能力を持っている者は、そのことが理解できないほどに馬鹿だ。

 俺がちゃんとやってあげないとなぁ~。」


 だけど、荒神乱堂は、俺たちが恨む理由を理解できていないようだ。


 本当に、他人の気持ちが分かりにくい人物なのだろう。つまり、自分に関しては、良くわかるということだ。


 「そんなことよりも、自己紹介がお互いに終わった。ならば、戦うということにしよう。

 私たちはここに、友達を作りに来たのではない。

 神に仇なす可能性しかないものを狩りに来たのだ。一方的のな。」


 ゴッドフリート=イプセンが淡々と自らの葉積城台に来た目的を言う。


 俺らは、上位主導者を倒さないといけない。


 こいつらが、神信会、いや、神の命令によって俺たちの命を狙ってくる以上は―…。


 俺たちの戦いは、始まるのであった。

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