第249回 話しを聞いてくれるとは思いたいけど―…

 「来たようだな、各田十言。」


 なぜか、表情に変化がない人が話しかけてくる。


 「お前たちは、何者だ。」


 俺は、この五人の人物がどのような存在なのかを尋ねる。


 「そうですね。最初に自己紹介をしておく必要が―…。」


 と、表情に変化がない人が言いかけたところで、邪魔が入ってくるのだった。


 「はあ、テメーは、上位主導者のことも知らないのか。馬鹿なのか!!!」


 馬鹿と言われても、上位主導者ということを聞くのは、実は始めてなのだ。


 「まあ、各田十言―…。お前が知らなくても十分だ。お前なんぞ、俺たちによって殺されるのだからなぁ~。

 まあ、最後ぐらい、遺言を残させてやるよ。それを聞いてやれるのも、俺の気分しだいだけどなぁ~。」


 と、表情に変化がない人が話すのを邪魔した奴が言う。


 一言、言いたいことがある。


 人の話は邪魔しないように―…。空気を読んで話しかけてきてほしい。


 「それなら、自己紹介の方をしてくれないか。あなたがさっき会話した人の邪魔をしていたので―…。」


 俺は、自己紹介するように促す。


 まあ、ほとんどないだろうが、自己紹介で相手に情報をペラペラ漏らしてくれないかなぁ~と、思いながら―…。


 可能性としては低いものでしかないが―…。


 「そうかよ、死んでしまうからせめて、敵の名前をか―…。まあ、いいだろう。名乗ってやるよ。

 俺は、上位主導者が一人、荒神乱堂だ。乱堂様と誰もが呼ぶ。お前らよりも強いことは事実だがな。」


 一人目は荒神乱堂か。


 あいつは、場の空気を読めないし、悪くしてしまう奴なのか。まあ、場の空気を乱したい時には使い勝手の良い人物なのであろう。


 それに、オラオラとしたタイプかもしれない。戦闘も攻撃重視かもしれない。


 「次に、乱堂に話を邪魔されたゴッドフリート=イプセンだ。もし、安住の地に行ったのならば、私の話をする時はイプセンという名で呼んでほしい。」


 二人目はゴッドフリート=イプセン。


 なんか感情がなさそうな人だな。だけど、感情に乏しいように感じるのは表情の変化が少ないからであろう。言葉からは、明らかに俺たちに勝利することは確定事項だという自信で満ちている。


 つまり、こいつは、自信家であり、自分が強いということを自負していることか。


 「で、おいらがテプテプだ。各田十言、君の人生を教えて欲しいな。」


 三人目がテプテプ。


 名前が可笑しそうな感じもするが、テプテプの出身地では重要な意味をもつ言葉かもしれない。水とか空気とか、人を明るく照らし導く者というなどの意味だったりするかもしれない。


 肌も黒く、如何にもなステレオタイプのイメージだけど、身体能力が高そう。そして、この中で、実は一番強かったり?


 まあ、人は見かけによらず、警戒しないに越したことはない。


 「俺の人生。そんなものは、平穏に過ごしたいのに、神信会や神、お前らが俺の持っている能力を恐れて、殺しに来るせいで、ファンタジーな日常を送っているよ。

 それに、俺は、お前らが命を狙わなければ、神も滅ぼされることはなかったのに―…。

 今更言っても、遅いが…な。」


 「そうか、すまんな。だけど、こちらも引くに引けなくなった。だから、悲しいけど頑張って、殺すわ。」


 もし、神を滅ぼす能力が俺に備わっておらず、テプテプとか言う人が神信会の人ではない状態で会ったのなら、親友にはなれていただろう。仲の良い友人、本当に人生とは不思議なものだ。


 まあ、そんなありもしないことを考えても仕方ないことだけど―…。


 「なら、こっちは返り討ちにするだけだ。」


 と、俺が言い終えると空気を読んだように、四人目が自己紹介を始めるのだった。


 「私は、カルメオーネ=バルドーンと申します。自己紹介とあったので、一応しておきました、神を滅ぼす能力を開花させた各田十言。

 それに、魔力因子を開花させたのが四人ですか―…。一人は、勇者であった阿久利正義の妹の阿久利美愛、かつて神信会の聖女であった風凪夏鈴、各田十言と昔からの知り合いで両親がクリエイティブ・アルケーの社員の渚山那留、そして―…、英雄の娘である夜見羽奈か―…。

 ある意味で、豪勢なメンバーだということか。次も、その豪勢メンバーでいけるのかな、各田十言。

 私は、いろいろと偉い人との顔が広いのでねぇ~、世間が知らない情報も自然と集まってくるものだ。隠し事は私の前では無駄だ。」


 四人目はカルメオーネ=バルドーン。


 見た目は、キザったい男で、女性にナンパを仕掛けていそうな軽い男だが、喋りはそれとは反対に陽気さを感じさせない。


 まるで、何か人の行く末を見られているような感じがする。心を覗いて、その本人よりも本人のことを理解しているような―…。不気味としか感じられない。


 得体のしれないものを相手にしているようだ。


 こういうのは、返って警戒しないには越したことはないが、必要以上に恐怖に駆られて、ヒステリー状態に陥るのが一番良くない。変な排除は危機を助長して、そのような結末になってしまうのだから―…。


 望む結果にしたいのなら、穏健に対処して、様子見をかかさないことだ。


 「そして、最後は私のようだ。私はリー=ウーロンだ。この上位主導者の纏め役のような者だ。

 だけど、強い権限があるわけではない。各田十言、君が殺されたくないという気持ちはわからなくもないが、我々も組織の人間である以上、その命令には従わないといけない。

 済まないが、殺されてくれ。魔力因子の開花者の四人を含めて、仲良くな。」


 五人目はリー=ウーロン。


 鷹のような目つきで、こいつとは人生で関わり合いたくないと見た目の判断では思ってしまう。


 ウーロンの言葉から察するに、命令に従順という感じの人間であろう。


 人として、個人的に思うところもあったりと、冷たいというわけではないのだろう。


 だけど、こっちだって、殺されたいわけではないので、素直に抵抗させていただくだけだ。


 「自己紹介も終わったところだし、そろそろ戦いといこうじゃないか。」


 荒神乱堂とかいう乱暴な奴が、戦いを始めようとするのであった。

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