第248回 上位主導者との最初の邂逅

 「どういうことかは、後でわかればよい。十言、美愛、夏鈴、那留、羽奈。正門へと向かうのじゃ。

 最初から戦闘を想定して、戦闘用の服装にチェンジすることも忘れることがないようにの~う。」


 「わかった。すいません。急用ができたので、そちらの方に向かいます。」


 アルケーが司令官のような物言いをすると、俺は立ち上がって、長真家のいる側に向かって、申し訳ないような表情をして俺は言う。


 「大変ですからね。神信会に命を狙われることは―…。私たちにはわかりませんが、各田十言君はそういう宿命になってしまっていることに関しては、同情する。

 だから、生き残ってください。私が言えるのはここまでです。」


 東英さんが代表して言うと、俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は正門へと向かうのであった。


 本当、神信会はなぜ、いつもいつもこのように急にやってくるのかな~。少しぐらいは空気を読んで欲しい。


 ダメだろうな―…。



 ◆◇◆



 葉積城台学園の正門。

 そこには、神信会の上位主導者の五人がいた。

 荒神乱堂、ゴッドフリート=イプセン、カルメオーネ=バルドーンも、もちろんこの場にいる。


 「チッ!! 何で待つ必要があるんだよ!!! さっさと倒しちまえばいいんだ!!!!」


 と、乱堂は不機嫌な言い方をするのだった。苛立ちというものが存在するのだろう。

 苛立たない時など存在しないといわれても不思議だと思われないのが荒神乱堂の人間性だから―…。


 「乱堂。そんなイラついてもことがうまくいくわけではありません。我々の相手はあくまでも各田十言、阿久利美愛、風凪夏鈴、渚山那留だ。

 この四人を今回は殺すことができればしますが、そうでなくてもいい。

 実力試しなのですから―…。くれぐれも本気を出さないでください。」


 ゴッドフリート=イプセンが冷静に落ち着いた言葉で注意する。

 ゴッドフリート=イプセンは、どのような作戦でいくか決まっていた。

 今回、十言たちを殺すことができれば殺すが、そうする必要に関してはそこまでない。

 あくまでも、十言たちの実力を測るというのが主目的であるのだから―…。

 に関しては、しばらくしっかりと調べる必要があるので、もう少し時間がかかることになる。


 「わかってるよ、いちいち感情のねぇ~声を出すんじゃねぇーぞ。」


 「これが私の個性なので仕方のないことです。申し訳ないが―…。」


 と、乱堂とイプセンの会話の中に一人の上位主導者が会話に混じってくる。


 「まあまあ、俺らは俺らだし―…。相手に強要するのは良くないと思うぜ、乱堂。」


 「お前か、テプテプ。」


 乱堂が今、話かけられたテプテプという人物に視線を合わせるのだった。

 その視線は、睨み付けるような感じを多くの人がその時の乱堂を見た時に抱くものであった。

 この人物、テプテプは、肌の色が黒いが、イケメンの類であり、性格も陽気で、多くの交流関係を持っている。

 誰もが初対面で仲良くなってしまうほどだし、本人も誰かと一緒にいるのが楽しいと感じてもいる。

 この性格のおかげで、神信会の上位主導者の中で最も親しまれている存在である。ちなみに髪はちりちりな状態である。


 「余計なことを言ってんじゃねぇー、とか言われそうだったけど、今日は機嫌良い方なんだな。

 じゃあ、乱堂も調子は良いということで―…。

 各田十言かぁ~。まあ、うちら神信会にとっては迷惑な存在だし、神のために殺さなきゃならねぇが、せめてどういう人物でどんな人生を歩んだのか、気持ちぐらいは知りたい。

 それぐらいしてやらないと、各田十言も浮かばれないだろ。俺の我が儘だけど―…。」


 テプテプは、他人の人生について興味があるのだ。趣味と言っていいほどに―…。

 だから、たとえ、神を滅ぼす敵でしかない各田十言であっても、その人物の人生について興味が惹かれるのだ。

 その人生を、その気持ちを、誰か一人ぐらいはちゃんと知っておかないといけないのだから―…。


 「テプテプらしい。だけど、各田十言の人生を聞く暇なんて、今回も、この先も存在することはない。

 我々に命を狙われている以上、必死に抵抗することしかできないのだから―…。

 我々に勝つことはできない。絶対に―…。」


 と、近くにいたイプセンが言うのだった。

 このイプセンの言葉には、感情というものもしっかりと感じ取れるほどであった。

 その言葉に乱堂もテプテプも驚く。


 「褒めてもらえたのか、イプセンから―…。明日は雨なのか。」


 と、テプテプは言う。


 「こんなことで雨が降るのなら、雨ごいなどこの世に存在するわけがなかろう。それよりも、集中することだ。

 最後に―…。」


 と、イプセンは視線を、上位主導者の最後の一人に視線を向けるのだった。


 「リー=ウーロン、お前から注意すべきことはないのか。」


 「俺からか―…。ない。各田十言を殺すことになっているが、本気を出すのではなく、実力試しということ。

 本番で相手にすべての手の内を見せないのが、今回注意しないといけないことだ。

 それ以上に言うことはないし、お前らは十分に神力を扱うことができる。いちいち、言うこともなかろう。」


 最後にリー=ウーロンが言う。

 この人物は、荒神乱堂よりも落ち着いた雰囲気を漂わせ、表情は鷹の目のように感じさせて、相手を目だけで言うことを聞かせてしまうことができる。

 それでも、女性の人気はイプセンやバルドーン、テプテプと変わらないほどだ。乱堂は性格的な問題で嫌悪感を抱かれる。

 この神が創った世界の中のアイドルにも負けず劣らずの容姿をしている。

 神信会の仕事で歌手デビューをさせられたほどだ。

 全員それなりに歌唱力というものはあったという。

 さて、話を戻すのだが、リー=ウーロンは、この中でも、年齢が一番上でバルドーンより一歳ほど年上なのだ。

 さらに、この上位主導者をまとめるリーダー的な存在である。

 性格が寡黙であり、あまりメンバーに指示を出すことは積極的にしない。

 それは、個々の力が強いので、変に命令するとかえって、反発を起こし、余計な混乱をもたらしてしまうからだ。

 そのことをすぐに理解することができるので、リーダーという存在になってしまったのであるが―…。


 「そうか、わかった。」


 「さあ、そろそろ各田十言たちがやってくると思います。」


 「楽しみ―…。」


 と、乱堂、イプセン、テプテプの順で言う。

 一方で、バルドーンは、心の中で上位主導者の様子を見ながら、考え事をするのだった。


 (ふ~む、さすがはウーロンですねぇ~。本当に人をまとめるのがうまい。指示の方は得意ではないが、あのような鋭い目が…ね。言うこと聞いちゃんだよなぁ~。

 そんなことよりも、この実力試し―…。各田十言たちも本気を出してくるのかな。魔力は修行することで量を増やすことができるから―…。そうなると、成長速度というものを考慮に入れないといけなくなると思う。

 だから、一回だけの実力試しじゃダメなんだよなぁ~。まあ、私は反対はしないし―…。

 私にとって、この上位主導者なぞ、対して意味のある役職や地位でもないからねぇ~。

 すでにあの方のため、いや、神のためにあるのだから―…。)


 このバルドーンは、謎が多いのだ。そのあの方とは誰か。

 いずれ分かってくることであろう。



 ◇◆◇



 俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は、玄関を出て、正門へと向かうのである。


 理事長室を出て、すぐに戦闘用衣装にチェンジしている。


 すぐにでも、奇襲攻撃が可能なぐらいには―…。


 だけど、状況によっては、話し合いということにもなろう。いきなり攻撃を仕掛けては、かえって神信会のことだから、そのことで俺たちを陥れようするに違いない。


 本当に厄介としか言いようがない。


 そして、俺たちは、正門の前へと到着するのだった。


 そこには、五人の人物がいた。


 全員、俺が美愛を助けるために神信会日本本部の敷地内にある教会に侵入した時にあった白い服の奴と同じ格好をしていた。


 その人物よりは、様になっていた。女性にモテる容姿をしているからか、こいつらは―…。


 まあ、見た目はどうでもいい。


 だけど、この五人が強いのはわかる。


 警戒は確実にしておかないと―…。


 こうして、俺は、始めて、後で知ることになる上位主導者たちと最初の邂逅をするのだった。

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