第247回 話し合いは平行線ということになる

 「それでは、話し合いを始めるとするかの~う。」


 「そうですね。」


 と、アルケーと生徒会長の父親である長真東英さんの双方が合意し、話し合いを開始することになる。


 「では、言葉遣いに関しては、かしこまらなくても構いません。私の口調も少し崩すことにしますが、よろしいでしょうか?」


 「別に構わない。儂も丁寧な口調は疲れるのでの~う。東英は気遣いができる。良い男じゃな。十言にも見習わせたい。」


 「はは、私もそこまで善人ではないのだよ。だけども、一人の人間として真面目でいられるようにはしようとしているだけ。」


 まあ、東英さんは、彼の妻からの視線が若干痛かったので、実情とは少しだけ違うようだ。


 「では、神を滅ぼすための戦いに協力をすることに関して、どういう意見か改めて聞きたい。どうじゃ。」


 「その判断に関しては、私の娘である彩華に任せます。長真家といえども、私が神と戦えるわけではありませんので―…。

 それに、彩華には、長真家と関係なく自由に生きて欲しいのです。

 長真家を無理に継ぐ必要もない。自分で考えて、自由に答えを出していい。

 彩華としての答えについて、アルケー様や各田十言君に対して言ってみてください。」


 東英さんは、生徒会長に自らの答えを言うように促すのだった。


 良い言い方をすれば自由に判断させているという感じとなり、悪い言い方をすれば責任を自身の娘に押し付けているということになろう。


 だけど、雰囲気や見た目から察して、前者の良い言い方の方が正しいように思える。


 生徒会長は答えるのだった。迷いもなく―…。


 「協力はいたしません。こんな彼女を何人も囲っている人として最低な男となんか!!」


 「彩華、ちゃんと説明したよな。私から―…。」


 すかさず東英さんが生徒会長に説明を始める。


 「各田十言君の神を滅ぼすための能力は、魔力因子を持っている女性とまあ―…あの…何だ…おしべとめしべをくっつけるような行為をしないと魔力因子を開花させることができないのだ。

 彼女が増えているのは、その行為で開花させるためにね…彼女達の信頼を獲得しないといけなくて―…。」


 しどろもどろになってる。


 そりゃそうだ。実の娘に、性教育に近い、いや、そのようなことを説明しないといけないのだ。


 性教育かどうか審議の分かれるところだけど―…。男女でナニする行為の説明なので、説明しずらいのも頷ける。


 たぶん、生徒会長以外全員、東英さんに同情してしまいそうになっていた。


 だって、俺と東英さん以外に男性はおらず、女性ばかりであり、やっぱり人の目があるので、そのような行為の名前に関しては、言いずらいのだ。


 平然と言う人もいるけど―…。たいていは、恥ずかしいものだ。


 「そういうことぐらい知っているよ。どういう行為をするのか。保健体育の授業でちゃんと学んでるから―…。」


 生徒会長の方は、東英さんの説明で理解できたようだ。それを確かめる術はないが―…。


 だけど、俺の能力を開花させる方法を保健体育の授業では学ばない。つまり、そういう意味ではなくて、開花させるためにおこなわれる男女の営みとかそういうの一般的なことを意味するのであろう。確実に―…。


 「私は、彼氏にするなら、誠実な人にする予定ですから、こんな何人もの女性を囲う誠実性のない各田十言君よりは―…。」


 ずいぶんと酷い言われようだ。誠実にしてるつもりなんだけど―…。


 「十言先輩は誠実です、生徒会長さん。」


 ここで那留が反論を始める。俺は誠実にしてる証拠を言って欲しい。


 「十言先輩は、私との再会を喜んでくれたし、すぐに抱きたいと言ってくれました。」


 はい、嘘―…。


 美愛と夏鈴のいる方から恐怖を感じるのだが―…。


 那留さんよぉ~、明らかに嘘を言っちゃいけないぜ~。


 俺としては、当初、那留に昔にアルケーのことで笑われたので、再会したくなかったし、男女の関係を持つことは嫌だったんだよ。


 それでも、なんやかんやあってそういう関係になったし、過去のアルケーのことで笑われたことは水に流したのだ。


 そういうことを説明すると、生徒会長は誠実じゃないって言いそうなので、しっかり那留の言っている嘘を訂正しずらい。


 それでも、正直に―…。


 と、思ったところで、美愛の方が訂正するのだった。


 「すみません。那留さんはどうしても、十言君のことが好きすぎて、妄想が逞しくなってしまったようで―…。

 本当は、十言君を過去に傷つけてしまい、再会後は、なかなか十言君に嫌われていて、それでも、那留さんが思いを伝えたことで、和解して、十言君の彼女となったのです。」


 「そうなのですか。二人の仲は、誠実性に欠け―…。」


 と、生徒会長が言いかけたところで、理事長の机に置いてある固定電話が鳴り始める。


 すぐに、雨音さんが立ち上がって、長真家側に「すみません」と謝りながら言うと、すぐに固定電話の方へ向かい、受話器をとって、電話を受けるのであった。


 「はい、こちら時任です。……はい……はい………はい…わかりました。」


 と、数十秒の電話を終えると、受話器を置き、全員に向かって雨音さんは言う。


 「葉積城台学園の正門に神信会の者たちが現れました。」


 一体、なぜに?

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