第245回 それでも一人やると意地をはる
「じゃあ、仕事しながらでもいい。話をしてもいいか。」
俺としては、これ以上、俺の生徒会入りについて話しても意味がない。
平行線をたどるだけだ。
なら、別のことを聞いてみるのも重要だ。
生徒会長の人となりを知っておく必要があるのだから―…。
「どうぞ。その方が私も楽だし。絶対に生徒会室から出て行くことはないのでしょ。」
「いや、生徒会長が寮へと帰る時に一緒に出ることにする。」
「そう。で、話しとは?」
こうして俺は、生徒会長に生徒会入り以外の話を始めることができるようになるのだった。
「生徒会長は、一人でも生徒会の業務をこなすことができるのか?」
俺は聞いておく必要があるし、確認しておく必要がある。
別に俺に関係があるわけではない。
生徒会を生徒会長一人で運営していくのは、困難なことでしかないし、予算案の概案と後日に出されるであろう細目を踏まえるとチェックするだけでも大変であることは事実だ。
そうなると、他の仕事を片付ける必要もあるから、生徒会長一人の手には負えなくなる。
たぶん、そのことを葉積城台の先生たちは、危惧しているのは事実であろう。生徒会長も言っていたような気がする。どうでもよかったので、聞いていなかったから、記憶が曖昧だ。聞いてなくても、今、聞いているのだから気にすることではない。
その先生の懸念が理事長であるアルケーの元へと上がってきて、解決するために、俺を生徒会に入れようとした。
さらに、生徒会長は長真家の人間で、俺がしないといけない神を滅ぼすための戦いで長真家の協力を得るために、俺と生徒会長を親しくさせようとしたことも相まって、ということもあるのか。
はあ~、本当に嫌だよ。苦労は若いうちにはしろというがもう少しだけ精神的に優しくしてもらえませんかね?
「できる。そんなこと当たり前じゃない。私は一人でしないといけないの。そんな当たり前のことを答えさせないで!!!」
生徒会長の方は、物凄い勢いで言うのな。
決まりきった答えであろうとは、予想していた。
それでも、表情を見ると、無理をしているのではないかと思ってしまう。最初に会った時は、俺も冷静さを失っていたことに気づく。
改めて、冷静になってみると、生徒会長は相当な意地っ張りのようだ。
いや、人に頼ること自体がいけないと考えているような節がある。長真家はそのような歴史でも、いや、生徒会長自身にそのようなことが―…。両親は大丈夫なのか。
俺は、長真家と協力関係を築いていいのだろうか不安になってしまう。
「これはすいませんでした。」
俺は生徒会長に謝る。頭を下げながら―…。
こういう人には、しっかりと頭を下げた方がいい。それも誠意をもって―…。
なぜなら、嫌っている人間に対しては、自分が間違っている場合にしっかりと謝っておいて方が良い。
これからの対応でどういう人間か簡単に分かってくるからだ。表情を見ることも重要だ。
「こちらも少し言い過ぎました。すみません。それでも、私は生徒会を一人だけちゃんと運営することだけは、決して忘れないように―…。」
生徒会長は、悪口は言うが、根が悪い人ではないようだ。
素直に謝るし、相手が謝ってくることに対して、必要以上に自分の優位と過剰な要求をしてこなかった。
むしろ、自分の言い過ぎた面を反省している。
それとは逆に、相手の謝罪に対して、過剰な要求もしくは自分の優位を示すために、過剰に相手を貶めたりする人は、かえってその人との関係を断ち切るか、第三者に介入させ、最悪の場合は司法の介入さえ必要になるだろう。
このような人は、自分のことしか考えることのできない人間であり、他者を不幸にしてしまう場合があるからだ。
その人は、自らの謝りを心の底から反省して謝罪することはないし、誠意を示すことはない。
「あと、こちらからもお願いしたいことがあります。」
「何。」
と、生徒会長は警戒しながら俺を見るのである。
「特に、那留に関して、馬鹿にしたのは謝ってほしい。さらに、美愛、夏鈴、羽奈とも良好とはいえなくても、嫌いな感情を出したような態度は止めてほしい。」
「それに関しては、こちらとしても検討するけど、いや、なるべくそのようにする。」
この後、俺と生徒会長の間に、会話という会話なく、一時間ほど、俺は生徒会室におり、生徒会長の仕事の様子を見る。
生徒会長の方は、俺に見られているのか、睨み付けてきて、仕事がしずらそうにするが、それでも馬鹿にされたので、これぐらいのことをやってストレスを解消しないと―…。
そして、俺は生徒会室を出た後、いつものように修行場へと行って、座禅を組んで瞑想をして、それから、修行場にいた美愛、夏鈴、那留、羽奈とともに家へと帰るのであった。
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