第244回 嫌な奴とは会わないといけないのだ、好転する機会がまだなくとも―…

 ~各田十言 View~



 翌日。


 今日も俺は、生徒会室へと行くのであった。


 それも一人で―…、だ。


 美愛、夏鈴、那留、羽奈は理事長室に呼ばれて、そっちの方へ行ってしまった。


 アルケーが何か良からぬ事を考えついたのだろう。


 それを、人のため、世のために使ってくれるとありがたいのだが―…。


 まあ、そんなことは一切、考えていないわけではないだろうが、自分の欲望を満たすためというのが事実のところであろう。


 巻き込まれるこっち側のことまで考えろよ、本当。


 さて、嫌なことしか続かない最近ですが、これを何とかすれば良いことでもあるかもしれないと思いながら、俺は生徒会室の中に入るのだった。


 生徒会室の中に入ると、二人の生徒と生徒会長がいた。


 「文化祭の実行には、これだけの予算が必要でして、承認していただけないでしょうか。」


 ああ、文化祭実行委員の実行委員長と実行副委員長か。


 葉積城台の文化祭は、主だって動くのは文化祭実行委員である。


 この委員は、各クラスのクラス長で構成され、三年生のクラス長の中から実行委員長、実行副委員長が選ばれる。


 なぜ俺がこのことを知っているかというと、昨日のホームルームで、文化祭についての話が出てきて、クラスの出し物を話し合ったからだ。


 その時に、美愛から文化祭がどういうものかを―…。夏鈴と一緒に―…。


 で、クラスから文化祭のクラスの出し物をおこなうための責任者が選出され、出し物の話し合いとなるが、俺はその出し物に関わることはできない。


 なぜなら、一応、神信会などの権力組織などは、俺が葉積城台で学んでいることを知っているが、世間一般の人は一切そのことを知らない。


 ゆえに、参加することはできない。表立ってだけど―…。いや、そこまでは言われていなかったか。


 それよりも俺としては、生徒会へと入るのではないかということが確定しているわけではないが、そのことでクラスの模擬店に関わることはできないと判断されたのだ。


 俺って―…。泣いていいかな~。


 まあ、そんなことを実際にする気はないけど―…。


 俺は視線を生徒会長や文化祭実行委員の委員長と副委員長へと戻し、会話を聞くのであった。


 生徒会長はペラペラと予算案の資料をめくるのであった。


 予算案に不備がないかを確認する。


 だけど、何となくだけど、俺は気づいてしまう。


 生徒会長は、目に薄っすらとくまを作っていた。大丈夫か、一人で―…。


 だけど、俺は生徒会長を助けようとは思わない。話せば侮辱されるし、俺の彼女たちに対して悪口を言われたのだから―…。


 それも許すことができないほどの―…。


 「うん、予算案は、概要はこれで大丈夫。だけど、細かい細目はクラスの出し物が決まって、具体的に決まったときだと思います。

 一応、事前の予算としては、これぐらいを最初に出しておいてください。

 ちゃんと、各クラスで、何にクラスの出し物で出された予算を何に使ったのか詳細な報告を出すように、しっかりと言っておいてください。」


 「わかりました。」


 「じゃあ、これで用事は終わりました。文化祭の方、頑張ってください。私も楽しみにしています。」


 「ありがとうございます。失礼いたしました。」


 そう言うと、文化祭実行委員会の委員長と副委員長が生徒会室から出て行くのであった。


 俺は、彼女達の邪魔にならないように隅っこに移動するのだった。


 その時、二人は、コソコソと話すが、その内容はバッチリ俺に聞こえていた。


 「各田君が生徒会に入ったって噂、本当だったのね。」


 「生徒会が一人でなくなって、もし、生徒会長が過労で倒れてしまったら、こっちの方が大変だったので、安心したよ。」


 そんなことを言っていた。


 生徒会長のことを心配しているようだ。まあ、文化祭で生徒会長がもし何かあった時に困るからであろうが―…。


 そして、文化祭実行委員の委員長と副委員長がいなくなったのを確認すると、生徒会室の中に入れないように鍵を閉める。それを生徒会長自らがおこなうのだった。


 それを終えると、俺へと視線を合わせる。睨み付けるように―…。いや、睨み付けているか。


 「で、何の用。各田十言君。」


 嫌われているのは今更か。


 ため息の一つもついていいかな。


 それよりも、また言わないといけない。昨日の繰り返しになることを―…。


 「生徒会に俺を入れてください。」


 「嫌。」


 だよなぁ~。


 だけど、俺は生徒会に入らないといけないのだ。あのアルケーが完全に何か企んでいるんだよなぁ~。


 そうなってくると、是が非でも俺を生徒会に押し込もうとするのは予想することができる。


 なので、俺が生徒会へ入ることに心の底から拒絶反応を示しても、無駄なのだ。人生に諦めは重要なのだ。


 なるようにしかならない。だけど、自分の平穏のためには、抵抗してみる。


 それに、美愛、夏鈴、那留、羽奈のために―…。


 「そこを何とか、お願い。」


 「嫌。」


 と、言いかけると、生徒会長は、自分の執務の机のところにある椅子に座り、作業を始めるのだった。


 「何度、私に頼んでも無駄。私が各田十言君、君の生徒会入りは一切賛成しないのだから―…。」


 生徒会長はこのように言う。


 「残念だけど。俺が生徒会に入らないことを了承しても、理事長が無理矢理俺を生徒会入りさせてくると思う。強権を使ってでも―…。」


 「そんな横暴が許されると思っているの。」


 俺だって、そのような横暴は嫌いだ。言えないけど―…。


 「残念ながら、俺の意思に関係なく発動する可能性はある。」


 「そんなものは、回避してあげるから―…。」


 「そうか。」


 勇ましいことで―…。

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