第243回 隠したい事実が多くて―…
~長真彩華View~
学生寮の自分の部屋に戻る。
葉積城台学園の学生寮は、一人一部屋となっている。
まあ、芸能関係の人もいるので、彼女達に配慮してのことであろう。
そのおかげで、自分の趣味に部屋の中で誰にも気にせず、費やすことができるのだから―…。
その秘密を誰にも気づかれないようにしないと―…。
自分がその趣味でどこまで有名かはわからないけど、登録しているサイトでのフォロワーの人数は、最初こそ数人だけど二、三年前から腕が上達したのか、数万、今は数百万ほどになっている。
まあ、どうしてこのようになっているか正確にはわからないけど―…。
私のやりたいことで成果が出ているという充実感がある。
私にとって、これこそが現実であり、生徒会長の姿は辛いことでしかないのだ。
私の幸せは、趣味の時間しかないのだ。
さて、パソコンを起動させる。そして、趣味に必要な機材もパソコンの近くに常に一台置いてあるし―…。
パソコンを起動させている間、私は、自分の体に埋め込まれている神力による鎖を見る。
それは、自分の中にあるものが鎖によって巻き付かれているのを想像しながら―…。
そのあるものは、父から聞かされたもの。
魔力因子。
私は長真家では珍しく、魔力因子を持って生まれた。
この魔力因子というものは、神を滅ぼす可能性を持つ力を秘めており、これを開花させるためには、神を滅ぼす能力を持つ人間と男女の関係になることが必要だという。
まあ、男女が交わるような行為、いろんな意味で―…。
だけど、私は神を滅ぼす能力をもつ各田十言と男女の関係になれば、この魔力因子は開花する。
だが、魔力因子を持っていることがバレれば、神信会や神たちによって命を狙われるのはわかっている。
だから、私の両親は私の体にこのように魔力因子があることを誤魔化すための神力を仕込んで、魔力因子を完全に封じている。
このおかげで、葉積城台学園の方も私が魔力因子持ちであることがわかっていないようだ。
このことを葉積城台学園側で確認をするわけにもいかない。確認しようとした時点で、私が魔力因子持ちであることがバレてしまうのだから―…。
さて、魔力因子も葉積城台学園側にバレるわけにはいかない。
たぶん、葉積城台学園は確実に各田十言の味方だ。理事長がその筆頭と考えていい。
各田十言を生徒会に推薦してきたということは、私の魔力因子、いや、私の家との関係を良好にして、神への反抗に協力させようとしている。
そんなこと、私が好まない。
父は、私に対してこう言っていた。
―彩華、長真家が葉積城台学園、それを含めてクリエイティブ・アルケーと協力することに関しては、お前が決めなさい。私は、彩華、お前の意見に従おう。お前が長真家を継がないことによって、家が滅びても構わない。私たちに今のところ、希望よりも絶望の方が大きいのだから―
葉積城台学園は、クリエイティブ・アルケーの傘下のようなもの。
厳密に言えば、葉積城台学園とクリエイティブ・アルケーの根幹は同じなのだから―…。
私という人間にとっては、とても重すぎる決断だが、各田十言という存在によって、絶対に協力しないと決めたのだから―…。
しつこくすれば、警察にでも訴えようかな。
そう思いながら、パソコンが完全に起動し、とあるソフトを開き、さっそく作業を開始する。
今日もはかどる、はかどる。
この時間が私が私でいられる。幸せ―…。
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