第242回 関わり合いたくないのに、関わらせようとする変態猫

 ~各田十言 View~



 俺は、放課後、生徒会に寄らなかった。


 今日は、昼休みの途中に生徒会室に行ったのだから―…。


 昼休みに食堂で食事をしていると、生徒会長が俺の隣の席に来たのだ。


 まあ、他に空いている場所がなかったのであろう。


 俺に対して、侮辱の言葉を浴びせるのだ。


 それでも、俺のことだけなら耐えることができる。我慢すればいいし、俺だけの被害で終わるのだから―…。


 だけど、俺の彼女たちに対しても攻撃的であったので、揉めそうになった。


 結局、生徒会室で話すことになり、話した。


 結果、生徒会長は、俺が神を滅ぼす能力を持っていること以外の情報を知らないということが発覚したのだ。


 生徒会長から言質をとったわけではないので、確定的とは言えないが、そうだと思われる行動は実際に見ている。


 だから、俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は、そのことで意見が一致している。


 最後は、チャイムが鳴って言質をとることに失敗したというわけだ。


 まあ、そんなことを知ってもどうでもいいが―…。


 俺の心は決まっている。


 生徒会長の家である長真家を味方につけることを諦めるのだった。あのような人と仲良くすることができないからだ。


 ゆえに、俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は、いつも通り、修行場へと向かうのであった。



 ◆◆◆



 修行場に到着する。


 「さて、修行をしますか。今日は、もう嫌な人には会わなくてもいいのだから―…。」


 そう、もうすでに生徒会長に会っているのだから、気分もスッキリするというものだ。


 もう会わなくていいのだから―…。


 さて、昨日はできなかった分の連携とか確認しておかないと―…。


 羽奈も加わったし、編入試験の関係や編入の手続きで連携がなかなかできなかったので、しっかりとやることにする。


 そういうことをしっかりとしておかないと、優位に戦いを進めることが難しいのだから―…。そうじゃなくても、可能な時はあるだろうが―…。


 「十言君、本当に生徒会長さんに会わなくてもいいとなると、物凄く元気になるのね。」


 「まあ、十言先輩を馬鹿にしていましたからね。生徒会長さん。本当に私は、あの人のことは土下座させてでも、謝らせてやる。私の十言先輩を侮辱した罪を償わせる。」


 「那留ちゃん。十言は那留ちゃんだけのものじゃないからね。」


 「夏鈴っち、那留っちは、いつも十言っちのことになるとああだから―…。」


 美愛、夏鈴、那留、羽奈が話し合っているようだけど、俺は気にせず修行を開始するのだった。


 生徒会長に対するイライラを修行にぶつけるのであった。



 ◆◆◆



 修行後。


 家へと戻り、夕食の準備をする。


 今日は、鶏の照り焼きにしようと思う。


 というか、羽奈との提案でそうなったのだ。


 まあ、羽奈のおかげで、いろいろと料理ついて学べるようになったし、いろいろバリエーションを増やせているのかな。


 そして、アルケーも帰ってきて、夕食を食べるのであった。


 そんな夕食の中、変態猫は俺が夕食の味を忘れてしまうのではないかということを言い始めるのであった。


 「今日も放課後に生徒会に行ったのじゃろう。で、説得はできたかの~う。」


 俺の中のイライラが―…、増してくるぜぇ~。


 「いや、今日の放課後は行っていない。というか、昼休みに食堂で生徒会長と一緒になってしまい、食事後に生徒会室で話し合いになりました。

 生徒会長は、俺のことを嫌っているし、さらに、生徒会へ入れるのを拒否している。

 あれは無理だと思うし、俺だけでなく、俺の彼女達のことを悪く言いますし、協力できるようになっても、溝ができてしまうとしか思えない。

 そんな人とは、良い関係を築くことはできない。

 以上で、長真家とは協力することができないことが判明しました。」


 俺は、アルケーにはっきりと言ってやった。というか、毅然とした態度をとるべきだよ、ああいう相手には―…。


 アルケーはというと―…。俺に対して、フン、と言って、嘲笑うような表情をするのだった。


 何、俺がさも悪いようなことをしているのではないか、と言いたいような表情を向けてくる。


 「十言、甘いの~う。そういう生徒会長である長真彩華は、本当は心の奥底では一人でいることを望んでいないのだ。

 長真彩華は、本当に信頼できる人間を待ち望んでいるのじゃ。

 そして、そういう人に対しては、自分のことのすべてを受け入れて欲しいのじゃ。

 それを察してやるのが男というものじゃないのか。」


 いや、それは単に男女の関係になれということを言っているようにしか感じない。


 それに、アルケーの言っていることが事実なのであれば、それは相当に重い人だと思うぞ。


 人は誰もが他人に言えないようなことを抱えていたりする。全員ではないけど―…。


 それでも、そのようなことに悩みながらも、相手との距離をはかりながら自分というものをしっかりと出していくのだ。


 それを上手く計れないのは、いろいろと理由があるのだろう。それだけで生徒会長が人としてダメになるというわけではない。人間関係を築く上で、大きな阻害要因にはなっているようだけど―…。


 でも、俺は、そういう人と仲良くできるほど、人としてできているわけではない。なぜなら、俺の彼女達のことを悪く言われたのだから、そういうことを言った人と交流を持つようになったとしても、すぐに破綻してしまうことは見え見えだ。


 「母さんがどう言おうが無理だ。

 それに、生徒会長という人は、俺が神を滅ぼす能力を持っていること以外の情報を知らないと思う。ほぼ確定的に―…。」


 「そうか、だけど、仲良くするように―…。毎日生徒会室へと行って、話しかけるのじゃ。

 こういう性格の人間には、毎日話しかけるだけでもいい。そうすれば、しだいに向こうの方から話かけてくれる。

 決して、十言にとっては良いような言葉を聞くことはできないが、それでも、我慢強く耐えるのじゃ。

 必ず、長真彩華は、受け入れてくれるはずじゃ。

 一番なのは、長真彩華の弱点を知ることで、それに好意的になることじゃ。」


 「はあ~、俺を無理矢理にでも生徒会長に会わせようとするのだろ。」


 絶対に、そうしそうだ。


 「そうじゃ。儂は長真家との協力関係を築きたいし、長真彩華の判断で長真家が味方になるのじゃからの~う。

 美愛も夏鈴も那留も羽奈も、嫌なことを言われるかもしれないが、お主らの戦いを少しでも優位に進められるのじゃから―…、少しだけだけど、我慢してほしいの~う。」


 と、アルケーは美愛、夏鈴、那留、羽奈に向かって言うのだった。


 「わかりました。」


 「猫さんはそういうところは譲らないから、エロいことと同じくらいに―…。」


 「仕方ないです。十言先輩のお母さんがそこまで言うのなら―…。」


 「まあ、罵詈雑言は互いに吐き合った方が精神的なダメージも少ないので―…。」


 と、四人ともアルケーの意見に、仕方ないかはわからないとしても、表面上は賛成するのであった。


 はあ~、人生とは、嫌いな人とも交流しなければならないことかもしれない、と俺は思うのだった。

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