第240回 まあ、子どもに重要な情報は言わないか

 「生徒会長、実は―…。知らなかったりするの?」


 と、羽奈が言い始める。


 羽奈は、生徒会長が実は、俺たちが神を滅ぼそうとしていること以外の情報を知らないということを―…。


 羽奈のその言葉を俺は、推測しているのだが―…。


 生徒会長は、口パクするように動かすのだった。


 話しているわけではない。あれは、図星を突かれて、何も言えない状況なのだ。


 これは、言い始めるのに時間がかかりそう。


 その間、俺は美愛、夏鈴、那留、羽奈とヒソヒソを話し始める。


 「羽奈の言っている通りなのだと俺は思う。」


 「私もそう思うよ、羽奈さんの言う通り。」


 「あ~、私が討伐対象されたのニュースにもなっていたぐらいなのに―…。知らない人がいてくれたのは、嬉しかったという半面、何か私の存在って思ってしまうよ。」


 「羽奈の言う通りなのは事実でしょ。生徒会長さんは親から情報を与えられていないみたい。

 まあ、私が十言先輩とか言って、抱きついたり、腕を絡ませたりすることに嫉妬しているのだと思う。リア充死ね的な意味で―…。

 実は、生徒会長って、恋人同士がすることに憧れていたりとか?」


 「那留っち。それは、生徒会長に聞こえないように言わないといけないよ。生徒会長に聞かれたら―…。」


 俺たちのヒソヒソ話しは、最初、生徒会長が俺たちが神を滅ぼそうとしていることの情報以外知らないということから、しだいに、というか那留によって、さっきの食堂で言われたことに対する陰口に対しての反論というか、生徒会長の悪口へと話が変わっていったのだ。


 実は、生徒会長が実は恋人同士ですることに憧れているのではないかということが俺たちの中で重要なことになっていた。耳年増のような感じで―…。


 その話の内容を羽奈が、生徒会長に聞かれるとまずいと思い、大きな声で言わないように注意するのだった。


 俺としても、あの生徒会長のことだからキーキー吠えそうな気がする。いや、口を変に動かして、今の状態のように考え始めるのだろう。


 本当、この生徒会長を相手にしたいと今のところは思わない。


 なんか、一人ぼっちを拗らせて、他人との関係をつくるのが壊滅的に下手になっていそう。


 俺の経験値には存在しないことなので、どう接すればいいかわからない。それに―…、俺の事だけじゃなく、美愛、夏鈴、那留、羽奈のことに対して、悪口を言うので、さすがに、仲良くはできない。


 長真家との協力が必要だとアルケーにしつこく言われなければ、絶対に話しかけることは二度とないだろう。それほどに俺は許すことができないからだ。


 長真家は、生徒会長以外はまともな人であることを祈りたい。


 「聞かれていないよ、羽奈。それにしても、十言先輩に対して、あの言い方はかなり酷いとしか言えないし、協力を得たとしても、あのような人と話さないといけないのは―…。」


 那留が嫌そうな顔をする。


 俺もわかる。頷きたいぐらいには―…。


 本当、人生とは自分の都合の良い展開にならないことをつくづく思ってしまうものだ。そういう時の方が、自分にとって達成したいことが上手くいくのであろうか。


 まあ、よくわかってはいないのだが―…。


 それよりも、那留のさっきの言葉に対して、美愛、夏鈴、羽奈がヒソヒソ言い始める。


 「私もです。」


 「私も。」


 「那留っちの意見に同意。」


 そう、三人とも生徒会長とは話したくないのだ。いや、仲良くなりたくないのだ。


 無理だろうな、うん。


 「後、本当に、私たちの情報を知らないとなると、十言が神を滅ぼす能力が具体的に何か、私たちの武器に関しても、知らないのは確実だし。

 そうなってくると、私たちのことを話す、それとも、このまま黙ったままにしておく?」


 と、夏鈴が提案をしてくる。


 その提案とは、俺たちの神を滅ぼすために戦ってきたことと、武器や戦い方について、話すか、それとも黙っておくかということである。


 「夏鈴っち、その意見はたぶんみんな決まっていると思うよ。」


 「そうよね、羽奈ちゃん。」


 「黙っておく、ということだね。」


 夏鈴の最後の言葉に首を縦に頷くのであった。


 理由は簡単だ。俺たちの武器や戦い方は、神信会や神には知られているのであろうが、すべての手の内を見せているわけではないし、まだ知られていないこともある。


 なので、ここで生徒会長に話して、それが迂闊にも他者に漏れてしまえば、すぐに神信会や神の察知するところになってしまい、こっちが弱点を握られ、彼らによって最悪の事態に俺たちが導かれてしまうことになりかねない。


 うん、そんなことにはなりたくないし。


 そうこうしているうちに、生徒会長は、言うべき内容がわかったのであろうか、話し始めるのであった。


 「私があなたたちに知っている情報をすべて教えると思った。言わなくてもわかるよね。私が君たちの情報を知っていることを―…。」


 なぜか、額から汗が出そうな感じで、気まずそうに話すのであった。


 たぶん、生徒会長は、俺たちが神を滅ぼそうとしている以外の情報をもっていないことを、確実に示す証拠を一つ増やしたということを俺らは悟ったのである。


 その時、キーンコーンカーンコーンと予鈴がなる。


 「そろそろ、午後の授業のようね。では、教室に戻りましょう。」


 と、生徒会長が言うと、俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈は生徒会室の外に出て、那留と羽奈は一年生の自分達の教室へ、俺、美愛、夏鈴は途中まで生徒会長とともに二年生の自分達の教室へと戻るのだった。


 その時―…。


 「運が良かったね、生徒会長さんは―…。」


 と、美愛がニコニコしながら俺に小声で言うのだった。


 いい気味とでも思っているのだろう。


 俺の推測にしか過ぎないが―…。

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