第239回 俺が懸念していたことが始まろうとしていたような気がした

 「そうね、これ以上言うと、空気が悪くなるのがわかる。昼食後、一緒に生徒会室へと行きましょうか。」


 と、生徒会長の方から提案してくるのであった。


 「わかりました。そうしましょう。」


 「言い争いを仕掛けて申し訳ございません。」


 と、美愛と生徒会長の双方が賛成すると、生徒会長は周囲に謝ったのである。


 俺に対しては、睨みつけるような視線をちらっとするのであった。


 あ~、なんで俺は生徒会長に恨まれなきゃいけないんだよ。


 本当、俺としては、ただただ平穏な時を過ごしたいだけなのに―…。


 その後の昼食は、どんな味だったのか覚えていない。楽しみの一つだったのに―…。



 ◆◆◆



 昼食後。


 昼休みの残り時間は二十分ほど。


 生徒会室へと今日も来るのであった。


 昨日が始めてなんだけどさ。今日で二回目ということか。


 生徒会室には、生徒会長である長真彩華に連れられて、俺、美愛、夏鈴、那留、羽奈が入るのであった。


 そして、生徒会室の扉の鍵を生徒会長が閉める。


 生徒会長は移動して、生徒会長が執務に使うであろう机にある椅子に座る。


 「近くにあるソファーに適当に座って―…。」


 と、生徒会長が言い、俺たちは言われた通りに二つのソファーに三人と二人に分けて座るのであった。


 ソファー自体は、三人が同じソファーに座っても少しゆとりのある長さであった。


 俺と羽奈が同じソファーで、美愛、夏鈴、那留が別のソファーで、三人で座った。生徒会長側に俺と美愛、それとは最も遠いのが羽奈と那留であった。夏鈴は那留と美愛の間に座っている。


 「まず、各田十言君を生徒会に入れようとは思いません。

 昨日、理事長が書類まで作って、各田十言君を生徒会へ入れようとしたのです。

 私は、生徒会長になってから、今まで、一人で十分に運営させることができているのです。

 本当に、新たに生徒会役員を増やす必要などないのです。

 それに、各田十言君は、日頃から女性へのアプローチを繰り返し、四股を成し遂げたとか。

 それに飽き足らず、五股にも挑戦中のようです。

 そのような不純異性交遊は、あくまでも生徒たちからの苦情がないから、見逃してきましたが、はっきり言わせていただきます。

 各田十言君は、女性に対して、誠実さがなく、人目を憚らず、女性たちを侍らせています。

 さぞや、葉積城台学園の生徒たちは、嫌な思いをして日々を過ごしているでしょう。

 そんな品行方正に欠ける方を生徒会に入れるべきではないし、生徒会は私一人で運営が可能です。

 だから―…。」


 生徒会長は、俺のことを罵倒するのに、長い言葉で話すのだった。不愉快な思いがしてならない。


 それでも、俺だけのことなら耐えるし、文句を言う気はない。自分だけで済むのだから、悪く言われようと問題はない。


 「良くわかりました。生徒会長さんが言いたいことが―…。そして、十言君が女性に対してだらしなく、生徒会へ入るのは拒否で、さらに、生徒会長さん一人だけでも生徒会は運営できると―…。

 それでも理事長がわざわざ文書を作ってまで、十言君を生徒会へ入れようとしたのよね。

 十言君の生徒会入りを拒否するのはわかる。」


 「そうよね!! 男の子が複数の女の子に囲まれるのは二……ゴホン……どんなことがあっても認められるわけがない!!

 それに、各田十言は神を滅ぼそうとかする危険な奴なんだから!!!

 神の力、舐めているとしか思えない!!!!

 神に反抗するなんて馬鹿としか言いようがない!!!!

 私たち長真家は、神と敵対したいわけでもないし、神を信仰したいわけでもない。中立なの。各田十言と関われば、神信会から恨まれるだけよ!!!!!」


 なぜか、生徒会長は、途中から饒舌になったかのように、俺に昨日、言っていないことまで付け加えていってくるのだった。


 はあ~、長真家は中立派ということですか。


 まあ、神信会に敵対しようとしているわけでもないのか。


 長真家は、ちゃんと神の力というものをしっかりと把握しているということ。


 冷静に考えれば、生徒会長の言っている俺たちが神を滅ぼすことが不可能だということは現状においては、多くの者に質問すれば同様に回答を得られるであろう。


 だから、その部分を否定することはできない。


 そう俺が考えているうちに、美愛は言い始めるのだった。


 「だけど、十言君に対する侮辱は、十言君に対して謝ってほしい。十言君が周りから誠実さのないように見える人でも、私たちは十言君に一度救われています。これは、はっきりと言うことができます。

 生徒会長さんが、十言君が神を滅ぼそうとしていることを知っているのなら、私たちに何があったのか知っているのですよね。

 最低でも、風凪さんのことに関しては―…。」


 「え~と………………………………………。」


 なぜか、生徒会長は言葉に詰まり、考え始めるのだった。


 俺が神を滅ぼそうということを知っているのならば、最低でも夏鈴が三神尚によって討伐対象にされたことぐらいは知っているだろう。


 だって、ニュースになっていたし、番組を急遽変更しての発表であったのだから―…。


 というか、生徒会長は俺が神を滅ぼそうということを知っているが、実はそれ以上のことは知らないということなのか。


 いや、長真家を味方にする必要が俺たちにある以上、さらに、俺たちが味方にしようとして接触している以上、俺たちに関する情報はテレビ以上に入手しているのでは―…。


 まさか、生徒会長が長真家の当主ではないとしても、そのような情報が―…。


 いや、待てよ。


 長真家の当主は知っているが、生徒会長には教えられていないとか?


 そういうことなのだろうと俺は、推測するのであった。

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