第238回 嫌な奴とはとことん出会うようだ

 翌日。


 昼休みのことであった。


 俺は、いつものように美愛と夏鈴とともに食堂へと向かいながら、那留と羽奈と合流するのだった。


 「今日も行って、お願いしないといけない。アルケーがどうにも毎日顔を出すようにだって―…。」


 「十言君、大変だね。」


 「ということで、今日も俺は遅れることになる。すまん。」


 俺としては、放課後は、神を滅ぼすため魔力の増加や、美愛、夏鈴、那留、羽奈との連携の時間に充てていたいのに―…。


 生徒会室に行って、俺のことを罵ってくる生徒会長の長真彩華に頭を下げて、生徒会へ自分を入れてくれるようにお願いしないといけない。


 今の俺は、こんなきつい修行をしないといけないのか。神を倒すための方向だけじゃなく―…。


 俺が何をやったんだということを言いたい。


 だけど、やっているんだろうなぁ~と思ってしまうわけだ。


 そして、食堂に着いた俺らは、注文して、自分たちの頼んだメニューを受け取って、席に着くのであった。


 今日、俺は、肉うどんにした。昨日の生徒会室の出来事のせいで、食欲が湧かない。


 美愛はオムライス定食、夏鈴はエビフライ定食で、エビフライの上に器用に旗が立てられており、夏鈴はその旗を外し、エビフライがのっている皿の外側に寝かせておくのであった。


 那留はカルボナーラ、羽奈は鮭のムニエル定食であった。羽奈は学食にしては珍しいものを頼んだようだ。


 俺たちは「いただきます」をした後に、食事を始める。


 そこから二、三分後に、一つの小さなそれでも俺が望まない事件が起こるのであった。


 「げっ!! 各田十言!!!」


 俺たちの近くに開いていた席の近くに、生徒会長である長真彩華がトレーを持って現れたのだ。


 ちょうど、夏鈴の向かい側の席で、俺の左隣が開いていて、それ以外はすべて埋まっているような状態だった。


 うわ~、来たよ。俺が今、最も会いたくない人が―…。


 俺は心の中で、心配だ、と思ってしまう。


 生徒会長の長真彩華が美愛、夏鈴、那留、羽奈に対して、馬鹿にしたり、見下すような態度をとるのではないかを―…。


 そんなことになったら、俺では止めることはできないだろうし―…。主に迫力という面で―…。


 それに、食堂にいる周囲の人々に迷惑をかけてしまうし、そのことが広まって、周囲から陰口を叩かれるのではないかと思ってしまう。


 長真彩華は、仕方なく、俺の左隣に座るのであった。


 「各田十言、君は今日も彼女たちと昼食なのね。こんなに彼女を作って、彼女たちに対する誠実さがないとは思わないのね。」


 おい、最初からそういう言葉を言ってくるのかよ。


 「彼女たちに対する誠実さは自分なり発揮させているつもりです。しかし、その誠実さは、美愛、夏鈴、那留、羽奈、それぞれが誠実であると感じることにあるので、生徒会長の言うように、複数の彼女がいるからと言って、誠実さがないと簡単に判断するのは良いとは思えません。」


 まともな正論っぽいのような言い方で言ってみる。


 よく考えれば、彼女が人数によって誠実さがあるとかないとかは、完全にすべてのケースで判断できるわけではない。


 「そうね。ある意味、各田十言の言っていることは真実だと思う。だけどね、学園内でイチャイチャされたりすると他の生徒が迷惑なの。

 「十言先輩」とか言う人を脅して無理矢理、腕を絡ませたり、あえて、「十言君」とか言う人に、嫉妬させるようなことを無理矢理させたり―…。

 そういうのは良くないと思うわ。」


 「それは、昨日も言ったけど、俺が無理矢理させていたりわけじゃないから―…。」


 大きな声で反論することも、強く言い返すことも今の状況、場所ではできない。ここは食堂であり、相手に喧嘩を売ったり、挑発したりしていい場所ではない。


 食堂は、文字通り食事をとる場所だ。


 「生徒会長さん。そういう言い方はよくないと思います。さらに言うのなら、無理矢理、十言先輩に抱きついたり、腕を絡ませたりしているわけではないですよ。

 あれは、十言先輩への愛情表現。私が十言先輩へ向けている愛に最大限気づいて欲しいという私なりのアピールです。

 生徒会長に何か言われる筋合いはありません。」


 と、ここで那留が生徒会長へと反論する。


 那留の言う通りなのだ。俺も那留のアピールについては気づいているし、できる範囲で応えたいと思っているし、そのように行動したい。


 「そうね、あなたがそう言うのならそうなのだろうね。だけど、周りの迷惑と不愉快な気持ちにさせている点については、考慮しないといけないのではないでしょうか。」


 「うっ…。」


 那留はまだ、通学中に俺に腕を絡ませたり、抱きついたりする気満々だ。


 だから、考慮することができないようだ。返事に戸惑っているとか言うよりも、図星をつかれたような感じで―…。


 気まずい雰囲気になってきた感じだ。


 生徒会長さん、空気は読んで欲しい。食堂の雰囲気が暗くなっているような、寒くなっているような感じがする。


 「あの、すいません、生徒会長さん。今、食堂で言うことではありません。周りの雰囲気が悪くなってしまうので、これ以上は、言わない方がいいと思います。」


 美愛が、空気を読んで生徒会長に丁寧な言葉で言おうとしている。


 俺にはわかる。美愛が怒っているのを―…。


 那留の仇とかではなく、純粋に、場の雰囲気壊すな的で―…。後、自分のことを悪く言う人は容赦しないという感じで―…。

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