第19回 いざ行け、神信会日本本部の教会へ
◇◆◇
車は、神信会日本本部の敷地にたどり着く。
車のドアを開けて、俺とアルケーは車から降りる。
「お気をつけてください、アルケー様、十言様。」
「雨音は、少し遠くで待機していてくれ。十言、儂は別ルートから神信会日本本部の敷地に入る。」
「わかった。俺は、一応、神信学園の学生だから、正面から敷地に入っていくことにする。そして、アルケーから受け取ったものを使って敷地内を探すよ。」
そうして、車を降りて、ドアを閉めた後、雨音さんの運転する車はどこかへと向かって行くのであった。
「そうじゃな。では―…。」
そういうと、アルケーはどこかへと走って行ったのである。
その姿を見た後、俺は、いつもの学園に通うかのように神信学園の校門へと向かって行く。
時間にして五分もかからずに、神信学園の校門に到着する。
そして、そこから校門の中へと入る。
警備に関しては、しっかりとしているが、誰もが教会へと向かえるようにするために、基本的に校門で身元確認をされることはない。
だけど、何か問題を起こせば、敷地中に設置された多数の防犯カメラによって問題を起こした人物を映像に記録することができ、それに死角は存在しないわけではないが、人がその死角に入ることができないほどに死角となっているところは狭い。
ゆえに、ここで、俺が問題を起こせば、すぐにバレてしまうのである。
はあ~、どうにか防犯カメラが点検中で、作動していませんように―…。
なんて、心の中で祈るのであった。
俺は、神信学園の敷地に入り、しばらく、緑の遊歩道を移動する。
そこで、アルケーから預かってきた、阿久利美愛という少女の位置を追跡できる装置を取り出す。
その装置は、小さい丸い球体であり、そこに魔力を込めると装置が作動し、登録した人物の現在地を探すことができる。
魔力を込めて、装置を起動させる。
神力を使えない俺であるが、魔力はあるみたいなのだ。
神信会に襲撃され、剣を手に入れた日の翌日に、アルケーに魔力の使い方を教えてもらったことがある。
その日のうちに、魔力をコントロールすることができていたのだ。
アルケーによると、魔力は、属性を扱うためには、その属性に対する資質が必要であり、その資質がなければいくら努力しても使えないのだ。
だけど、その属性に対する資質があれば、誰でも鍛え方しだいで、王や神クラスの威力になることができるのだ。
それは、神力では、いくら人が頑張っても、神クラスの威力になることはできないし、神のようには属性を操ることはできない。
そして、サイコキネシスのような超能力のように物体に干渉する能力は、魔力が扱えるものであれば、簡単にできるという。
そう、属性以外の能力は、頑張り次第で、魔力を扱う者にとっては、威力を神クラスにもっていくことができる。
さらに、神力は、生まれた時からその能力容量が決まるが、魔力は、魔力量を増やす方法をしっかりと試みれば、容量を増やすことができる。
俺は、あの神信会の人間から襲撃され、神を滅ぼす力を開花させた日の翌日から、夜に一時間ほど、魔力の容量の増加の修行をしている。
その修行方法は、ただ、禅を組んで、瞑想するだけである。
現在、他に方法が確立されているわけではない。さらに、ただ禅を組んでいたとしても意味がない。雑念を払いのけることが必要だ。
そうして、心を落ち着かせる時間(雑念を払いのけている時間)の長さによって、魔力容量が増えていく。
この時、起動した装置に、阿久利美愛の居場所が俺の頭の中で告げられる。
―ここより、まっすぐ歩き進んでください―
俺は、装置の言う通りに進んでいく。
装置を起動させたまま。
そうして、歩いているうちに、アルケーと合流する。
「無事、侵入できたようじゃ。」
アルケーは、誇らしげに言う。
はいはい。どうでもいい。
アルケーの言葉に返事をせずに、装置に従って歩き進んでいく。
「少しぐらい、儂の言葉に返事をしてもいいのではないかの~う。」
そんなアルケーの拗ねた声も聞こえたが、俺たちは、神信会日本本部の阿久利美愛がいる場所へと向かって行った。
そうして、俺とアルケーは、教会と思しき建物に辿り着くのであった。
―この建物の中に、対象人物がいます―
装置がそう告げると、俺は、装置に魔力を込めるのをやめ、装置をポケットしまい、教会の入り口へと向かって進んでいく。
教会の入り口の目の前に着くと、そこから声がした。
「だから、ここは、心を鬼にして、美愛様の首を刎ねてください。
勇者様、あなたは、人類を魔王や魔物たちの恐怖から救うこと、それが使命でしょう。その使命を果たせ!!
神の意志を果たすことが、人類の生きる道であろう!!!
神に逆らい、人類を滅ぼすのか、勇者様は!!!!
神がその気になれば、人類などあっという間に、何も抵抗することができずに滅んでしまいます!!!!!
そうなってしまえば、あなたの家族である美愛様も結局は、死んでしまう。
だけど、大丈夫、勇者様。」
何を言っているんだ。
勇者、美愛様って―…、阿久利美愛のことか。
首を刎ねるって―…。
「ここだけの話です。美愛様を殺しても大丈夫です。神様はこうおっしゃっています。今、私めに啓示が降りてきました。
勇者阿久利正義、お前が美愛を殺したとしても、魔王を殺し、人類に平和をもたらしたあかつきには、妹である美愛を生き返らせよう。
勇者のその美しき家族愛に免じて―…。
そうです。勇者様。今、美愛様を殺しても問題はないのです。美愛様を魔物にしたあの憎き魔王を殺せば、神はきっと美愛様を生き返らせて、家族が幸せに過ごせる日を保障されるのです。
だから、美愛様のために―…。美愛様に悲しい思いをさせないでください。」
何を言っているんだ、こいつは―…。
人が死んで、死んだ人間が生き返る。
そんな話、聞いたことがない。
「この中に、阿久利美愛はいるみたいだ。それに―…、まだ生きておるが、殺されそうになっている。」
「そうだな。とにかく扉を開けてみるか。」
そうして、俺は、扉を手で開けようとするが―…。
「鍵がかかっている。」
俺は、そう、アルケーに言う。
「なら、剣で斬ってしまえば、これぐらいの扉なら簡単に斬れるだろう。」
「わかった。」
俺は、剣をこの場に展開して、握り、真後ろに振る上げて、自らの体の後ろへともっていく。
そして、そこから、上へ振り上げ、剣の動きを止めずに、重力に従って、扉を斬る。
結果、教会の入り口の扉を斬ることに成功する。
それでも、直線に斬れたのみだ。
「十分じゃ、十言。」
そして、アルケーが魔力を込めて、教会の扉に向けて猫パンチをくらわす。
猫パンチは教会の入り口の扉に直撃し、ビリ、ビリビリ、と扉が砕けて、壊れるのであった。
それを確認した、俺とアルケーは教会の中に入る。
そこには、全身白の上着とズボンをきて、袈裟のようなものを身につけた人物と、 黄色のマントと、赤の上下の上着とズボンで、柄などもなく、赤一色で覆われている奴、他にもRPGに登場しそうな恰好をしているのがいる。
そして、その近くで、眠っている葉積城台の制服を着ている美少女が一人。
あの子が、阿久利美愛…。
って、今日、俺がスマホを拾って、渡した美少女じゃないか。
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