第13回 スマホから電話が、えっ…、女子校へと向かえ…だと

 スーパーでの買い物を終える。


 片手でエコバックを持ちながら、俺は歩く。


 エコバックを持って歩く俺は、自身が少しだけカッコ悪いのかなと思うが、これからはエコバックをもつ男子がカッコイイになってくる時代になることを考える。


 エコバック男子。うん、文化的価値観よ、そのようになっているならそれでOKだ。俺は―…。


 ちなみに、チョコッとスパイスも買えてしまった。


 なぜか、人気、爆売れ中などのポップが書かれていた。なんで?


 スーパーから出て、そんなことを思いながら、今は、それから五分ほどの時間が経過したのだろう。


 ここで、ブ――――――ン、と音がなる。


 俺のスマホの音だ。


 ズボンのポケットから俺のスマホを出して、誰からの電話かを確かめる。


 アルケー…。母さん。


 スマホを耳あて、電話に俺はでる。


 「母さん。どうした。」


 「大変なことになった。」


 「はあ。大変なことって―…。」


 「今すぐに、葉積城台学園に来てくれ!! 儂も今、そこに向かっておる!!! 道はわかっておるじゃろ。」


 「いや、葉積城台の行き方は知っているが、なんで、俺が。あそこ女子校だろ。」


 「とにかく来るのじゃ!!!」


 アルケーが叫ぶように言うと、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、プチッ、電話がきれる。


 葉積城台―…、俺が行って大丈夫なのか。


 アルケーの声が切羽詰まっていたような感じだったし。


 これは、真面目な電話内容。


 ふう~。おふざけではない。


 とにかく、行きますか。


 こうして、俺は葉積城台学園へと向かって行った。


 ちゃんと、学校の中に通してもらえるかな~。不安だ。



 ◆◆◆



 少し急ぎ足だったが、20分ぐらいで葉積城台学園の校門前に到着する。


 葉積城台学園は、昔、葉積城というお城の跡地に建設された女子校である。


 葉積城が丘の上に建っている城であったため、校門へ向かうのに坂道を登らないといけないのだ。慣れてないと、かなりきついのだ。


 葉積城台学園の校門は、壮大な大きさであった。


 まるで、校門の先は、女の花園という雰囲気を感じさせる。


 今は、校門が閉まっている。今日は土曜であるが、学校で授業をしているのかもしれない。


 俺は、校門にある守衛室のほうへと向かって行く。


 そこには、女性のガタイのいい守衛さんが一人いた。


 「あの~、すみません。母親の用事でここに来たのですが、通ってもよろしいでしょうか。」


 と、言うと、守衛はさらに詳しく尋ねてきた。


 「お母さんの名前は何と言うんだい。」


 「アルケー。」


 正直に言った。母親の名前を―…。


 アルケー以外に、俺は猫で、自分の母親の名前を知らない。一回も聞いたことがない。これが偽名であっても、俺は自分の母親の本当の名前を知らないから意味がないのだ。偽名ですらないのかもしれないが―…。


 守衛の女性が頭を傾げる。


 何か変こと言ったか、俺は―…。言っているな。


 それでも、自分の母親の名前をアルケーとしか知らないのだからしょうがないだろ。


 ここに呼んだのは、自分の母親なのだから―…。


 「残念ですが、そんな名前の人は、この学園にはいません。どこか別の学園と勘違いなされたのではないでしょうか。」


 まあ、普通はそうだろうなぁ~、と俺も思う。


 だけど、事実なのだ。本当に、葉積城台に向かうよう言われたのだ。証拠だってある。


 「すいません。母親に確認してみます。」


 俺は、自分のスマホを取り出し、アルケーに電話をかける。


 トゥルルルルルルルル。


 守衛さんは、それを怪しい視線で見るのであった。


 数秒のスマホの音がした後、アルケーは電話にでるのだった。


 「何だ、十言。道にでも迷ったのか。」


 「いや、着くには着いたんだよ。葉積城台に―…。だけど、母さんの名前を出しても入れてくれないんだよ。」


 「あ~、そうか。儂の名前、葉積城台の表の役員名簿には名前がないからな。偽名使っているしの~う。今、教えても怪しまれるだろうから、雨音をそちらに向かわせる。そいつに、アルケーと名を言えば、わかってくれるだろう。じゃの~う。」


 プッツ。


 トゥー、トゥー、トゥー。


 俺はしばらく待つことにした。


 その時に守衛さんにこう言った。


 「雨音さんという方がこちらへと向かってくるよう、母親が言っていました。ので、少しだけここで待ってもよろしいでしょうか。」


 守衛さんは無言で俺を睨み始める。


 もしも、俺が守衛の立場ならそうなるよ。


 俺が女子校の女子を見るためだけにここに来たのか、何かよからぬことをするために来たのか。


 でも、断じて違うから。


 ちゃんと、アルケーがここに来いと言われてきているのだから―…。


 怪しいところなどないんだから―…。


 こうして、俺は、守衛さんに睨み続けられ、精神力をすり減らしていったのだ。


 もしも、守衛さんが異世界で出てくるモンスターなら、俺のMPは、その睨みを1分続けられるだけで、0になってしまっていることだろう。


 それぐらいに、その睨みが強かった。



 ◆◆◆



 数分の時間が経過した。


 守衛の女性の睨みで、すでに精神力を摩耗し、完全にビビりきってしまい、家へと帰ろうという頭のコールが何十回にもわたって響き渡り始めた頃、一人の女性が校門の方に学園の中から向かってくる。


 俺にやっと女神が舞い降りた。


 その女神は、雨音さんというらしい。


 灰色のスーツをビシッと決めており、ズボンをはいていた。


 スーツの大人の女性に救われる俺、何か良いことがあるに違いない。


 あと、アルケーには、いろいろ言っておこう。そうしよう。


 スーツを着た女性が、校門前に辿り着くと、俺に向かって尋ねてきた。


 「あなたが、各田十言様ですか?」


 「はい。母親のアルケーにここに来るように呼び出されました。」


 「ええ、アルケー様より伺っております。」


 と、雨音さんが言った後、守衛さんに俺のことを伝え、俺はこの葉積城台学園の中へと入っていくのであった。


 なぜ、ここにアルケーは入ることができるのか。


 どうして、雨音さんはアルケーを様付けで呼んだのか。


 謎だ。

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