第1章 狙われる者を奪還せよ

第11回 ラッキーアイテムが猫って、ラッキーアニマルにしてくれよ

 ◇◆◇



 平和っていいわ~。


 こんな清々しい朝を心の底から感じることができるのだから―…。


 俺は朝の日差しを受けながら、太陽に眠気という海から引き上げてもらう。


 それは、気持ちいいのだ。


 やっと、水の中から出て、息を吸うことができるように―…。


 生きていると感じるのさ。


 「朝食を作るか。」


 俺は、自分の部屋を出て、顔を洗いに行く。


 洗顔などは面倒めんどくさいので、軽く水で顔を洗い流すだけ。


 そして、それを終えるとリビングに向かう。


 リビングに着くと、そこには不満そうな顔をしたアルケーがそこにいた。


 「我が息子、十言よ。性転換して女の子になってくれ。」


 「だ。」


 「娘が欲し~い~。娘だったら、いろいろ可愛い衣装を着せまくって、エロいポーズをさせて、写真をとって、娘の写真フォルダを作れたのに―――――――――――――。」


 歯嚙みするな。


 アルケーの娘じゃなくてよかったぁ―――――――――――――――。


 もしも、そうだったら、絶対グレてたわ――――、本当ホント


 っと、そんなことは今はどうでもいい。とにかく朝食を作らないとな。


 俺は、キッチンへと向かい、朝食を用意する。アルケーの分も含めて―…。


 今日は、食パンとスクランブルエッグと、レタスがあったからそれでいいか。


 朝食に凝ったものはいらない。


 そんな気分じゃないし。


 

 すぐに、朝食の準備を終える。


 食事の量はちょうど二人分。


 俺だけであれば、一人分で済むんだが、アルケーはなぜかペットフードや猫缶ではなく、人が食べるものを食べることができるのだ。


 未だにそのことがわからない。なぜ?


 そんなことを思いながら、俺は、テーブルに二人分の食事を運ぶ。


 「母さん。食事の準備ができた。」


 と言うと、アルケーは返事をして、食事の置いてあるテーブル近くにある椅子まで向かって歩く。


 そして、一つの椅子に取り付けているアルケー専用の椅子へと向かい、そこにぴょんとジャンプして座るのである。


 アルケーは、魔力の中の念力サイコキネシスの技を用いて、ナイフやフォーク、スプーンを浮かせて、人が食事をする時ような動作をしながら食事を開始するのである。


 その時に、「いただきます」と言いながら―…。


 俺もちゃんと「いただきます」と言って、食事を開始する。


 アルケーは、人の言葉も普通にしゃべり、食事も人と同じものを食べ、人にはありえないほどの超能力者でもあるのだ。


 もし、このアルケーをテレビに出演させれば、億万長者も夢じゃない。


 だけど、アルケーはそんなことに興味はないらしい。


 アルケーは、どこかの重要なお偉いさんだと自称していて、テレビ出演を嫌がっているのだ。


 お偉いさんというのは、嘘であろう。


 しかし、生活ができるほどに収入は入ってくるので、何かしらの仕事はしているのだろう。


 猫が仕事するわけがないと思う人がいるかもしれない。


 だけど、そのお金は、俺が稼いだわけではないし、過去にアルケーに言っても、仕事が何かは教えてもらえなかった。


 それでも、俺が神信学園に進路を定めた時に、アルケーが「そこはやめておきなさい。それなら、葉積城台はづみじょうだい学園にしなさい」と言っていた。


 葉積城台学園って…、そこ女子校だよ。


 俺は女子じゃない。男子だ。


 生物的な分類でも男子だ。


 まあ、いろいろとあって、そんなこんなで、俺はアルケーを強引に説得し、神信学園に通うことにしたのだ。


 俺が神信学園を選んだ理由?


 それは、単に、神信学園の方が偏差値が高く、日本でトップクラスの大学への進学率がこの地域で最も高いからだ。


 俺の人生にやりたいことは、今現在ないので、いざやりたいことが見つかった時に学歴の関係でできませんという確率を減らすためだ。


 そんなことを思いながら、朝食を食べていると、アルケーがつけたと思われるテレビからの音が聞こえる。


 「今日の占いコーナー。幸運叶運かなうんです。では、第1位――、ふたご座のあなた。今日のあなたは、落とし物を拾って、落とした人へ届けよう。その人との恋が始まるかも。ラッキーアイテムは、猫。」


 あ~あ、俺、今日1位か。


 ちなみに、俺こと十言は、6月5日生まれのふたご座なのだ。


 それにしても、落とし物を拾って、恋が始まるとはねぇ~。


 ありえねぇ~わ、それ。


 さらに、ラッキーアイテムが猫って…。猫はアイテムじゃないだろ。


 それなら、ラッキーアニマルにしておけよ。


 でも、まあ、出会いか~。恋かぁ~。


 そう思うと、当たってほしいな~、今日の占いの内容は―…。


 「ごちそうさまでした。」


 アルケーは食べ終えたのか、念力でナイフやフォーク、スプーンなどを浮かせて操って食事するのを終える。


 すでに、食器に盛られていた食べ物は、すべてアルケーの胃袋におさまっており、念力で操ったものは、ちゃんと一つの食器の上に綺麗に置かれていた。


 「あ、そうだ。十言。前に買ってきたチョコっとスパイスを買ってきてくれないか。あれが意外に病みつきになるんじゃ。今日中に補給しないと、危ない状態になってしまいそうじゃ。」


 そのお菓子、即刻販売中止にしたほうがいいのではないか?


 それでも、ずっと家の中にいて、ろくに散歩させることができないので、少しぐらいの我が儘なら聞いてあげないとな。


 「わかった。買ってくるよ。一応お昼までには帰ってくるよ。」


 「あい。」


 そんな返事をしたのち、食器を最近買ったばかりの食器洗い乾燥機に入れ、部屋に戻って私服に着替え、買い物に出かけるのであった。

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