第7回 これがこの物語のスタンスのようです

 近くの公園に着く。


 俺は、ブランコに乗り、その右横にあるブランコにアルケーが乗る。


 それも、器用に―…。


 なぜ、猫が簡単にブランコに乗っているんだ。


 人と同じ乗り方で―…。


 いや、前足は届いていないから、魔法で乗っているようにしているのか。


 俺が驚いているのを無視してアルケーは話を始める。


 「十言。お前は、神を滅ぼす力を持っている。

 その力は、神信会にとってはとても危険な力なんじゃ。

 だから、十言は、さっき、神信会の刺客によって命を狙われたのじゃ。

 十言の命が狙われるようになったのは、生まれた時からじゃ。

 本当の両親も仕方ないかどうかはわからないが、十言のその神を滅ぼす能力が開花できる状態にあるのを神に知られるのが怖かったからじゃ。

 子どもはまたつくればいい、自分たちの命を失くすことのほうが、これから生まれてくる自分たちの子どもたちの人生を守る。

 そう思ったのじゃろう。

 儂は、お前の命を守るために、お前を両親の元から引き離して、育てることにした。

 十言が成長して、神信会や神に対抗できるような年齢になるまで、確実にその居場所がバレないようにしていたのだ。絶対に―…。

 だけど、今日、完全に目覚めた。その兆候はすでにあった。だから、十言を影から助けることはしなかった。すまぬの。

 これで、十言にはっきりと言える。

 儂の願いじゃ。

 この世界を創り、人々に理不尽を押し付ける神を滅ぼしてくれ。

 それは、十言にしかできないことなんだ。神を滅ぼす力を持つ者にしかできないんじゃ。」


 アルケーが言い終えると同時に、俺に向かって頭を下げる。


 俺は思った。とにかく、バランスを崩して、ブランコから落ちるなよ。


 それでも、俺はアルケーの話を真面目に聞いていたし、不思議な力がどんなものであるかは何となくわかっていた。


 そして、俺のこれまでの多くの人生を確実に、正確に思い出したのだ。一部あやふやなところはあるけど―…。


 だから、わかる。今まで、俺は、アルケーによって守られていたのだ。


 アルケーはまた、俺が持っている神を滅ぼす力で、神を滅ぼしてくれることを望んでいたんだ。


 アルケーが、神信会の神を恨んでいるのには訳があるのだろう。


 そして、これから、俺は、神や神信会から命が狙われることを―…。


 答えは決まっている。


 たとえ、アルケーの神を滅ぼすということのお願いを断ったとしても、神や神信会は俺の命を狙い続けてくるだろう。俺が死ぬまで―…。


 だから、俺は言う。


 「わかった、母さん。神を滅ぼすよ。俺の平穏な日々のために―…。」


 と。


 今から思えば、馬鹿なことなのかもしれない。


 そんな馬鹿なことも現実になるのだ。俺は、自分の平穏な日々のために神を滅ぼす。


 神が滅ぼされるのを恐れて、俺を殺そうとするのなら、文句はないよな。


 俺を殺そうとして、神、お前が滅ぼされることも―…。


 こうして、俺は、神を滅ぼすことを決意したのだ。


 後になって知ったことなのだが、さっきアルケーの言っていた言葉には一部に嘘があったということを知る。すべてが嘘でなかったことは幸いであるが―…。


 「ありがとう、十言。そのためには、仲間を作らないとな。ただし、神を滅ぼす仲間は十言以外は、女の子しか無理じゃからの~う。それも、魔力を扱うことができる因子を持った女の子しかねぇ~。

 まあ、男でも構わないんじゃぞ。十言。お前、実は男の方が性的に好きなのか?」


 何を言っているんだ、この変態猫。


 俺は、いたって世間的に言うところのノーマルだ。


 俺は、ちゃんと、女の子の方が好きなんだよ。


 結婚するなら、自分を好きなってくれたもしくは好きになった女の子としたいんだ。


 「あ、一つ忘れていた。十言、お前の剣は、神や王以外の者は、誰も殺すことができないが、神や王以外の者からは、確実に防御することができる能力を持った剣じゃからな。

 儂が今調べたところによると―…。」


 えっ、俺の剣の性能って―…。


 だから、襲撃してきた不精髭のおっさんに直接剣で攻撃することができなかったのか。不精髭のおっさんを殺してしまうから―…。なるほど。


 つまり、 神や王以外からは、守ることはできても、殺すような攻撃ができない。


 「剣の性能がそうじゃから、仲間になった女の子たちに、倒してもらうしかないの~う。あ、そうだった。女の子たちも仲間にするなら、魔力因子を発揮させるために、必ず男女がまぐわう行為とか、夜の夫婦の営みとかいわれる行為をしないといけないんじゃぞ。わかったか、十言…。十言?」


 ポンコツなのか、スゴイのかわからねぇ―――――――――――――――――――。


 俺は心の中で叫ぶのだ。そのせいで、アルケーが言っていた剣の性能以外の大事な部分を聞き逃すのであった。


 こうして、俺が神を滅ぼすための物語は開幕する。

 

 俺、大丈夫かな?

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