第6回 ファンタジーなのだから能力もチートに決まっているなんて思ったことがこの時はありました。結果、絶望したよ。

 光が治まっていく。


 そこには、一つだけありえないものがあった。


 どうやって、出てきたのか。


 わからない。


 だけど、今はそれに縋りつくしかなかった。


 俺の命を終えさせないために―…。


 手を伸ばす。それを掴むために―…。


 そして、俺は、それを掴む。


 そうすると、それの正体がわかった。


 剣だ。この剣は、長剣といわれるもので、長さは俺の背から頭一つ分ぐらい引いた長さで、超一流の職人によって精錬された鉄を名工とされる職人によって鍛えられたように、光を帯び、見た者すべてを感動させるほどの魅力を持っていた。


 俺も、その魅力には引きつけられてしまう。


 もしも、剣が美少女に擬人化できるのであれば、告白する勇気のない俺でもすぐに付き合ってくださいと告白してしまう。


 剣を掴んだ俺は、感じた。


 これが、俺の力だと。


 そして、きもいおっさんのダガーの攻撃を防ぐ。


 「なっ!!! 何だ、それは!!!!」


 と、きもいおっさんが驚くのだ。


 まあ、いきなり剣が現れたのだ、驚くに決まっている。


 だけど、今は、そんな悠長なことを思っている暇はない。


 決めさせてもらう。


 俺は、一歩を踏み出し、剣を振り上げる。


 一秒でも早く、相手を倒したかったのだ。


 その時、気合いを入れるために叫んだ。


 「オオオオオオオ――――――――――――――――――――――――。」


 と。


 だけど、意味がなかった。


 「えっ。」


 だって、俺が掴んで、握った剣は、きもいおっさんの体をすり抜けたのだ。


 きもいおっさんの攻撃を防ぐことはできたのに―…。


 どうして、どうしてだよぉ―――――――――――――――――――――。


 「!! 何だ、すり抜けた…。まさか―…、目覚めやがったのか。神を滅ぼす力を!!!」


 あれ、きもいおっさんが驚いている。


 俺はそのことに気づいて、少しだけ冷静になれた。


 どういうこと? 神を滅ぼす力? 何それ、おいしいの?


 まあ、神を滅ぼす力に関しては、今はおいておこう。


 きもいおっさんが驚いている間に状況の整理だ。


 俺の剣の攻撃は、きもいおっさんには効かない。だが、俺は、きもいおっさんからの攻撃を防ぐことが確実できる。


 ということは、詰んだ。


 勝敗が決まらない。


 いや、あるか。物理攻撃できもいおっさんを倒せばいいのか。


 「神を滅ぼす力が目覚めてしまったようだな。だけど、俺を殺すことはできないようだな。こうなったら、俺も各田十言、お前を殺すことはできない。今日は、引き上げることにしよう。

 覚えておけ、各田十言。お前は、神の裁きによっていずれ殺されることになる。」


 と、きもいおっさんは言って、引いていくのであった。


 神の裁き…。いや、神に迷惑をかけた覚えがないのだが―…?


 まあ、俺の命は助かった。


 これで充分か。


 とにかく、家に帰ろうか。


 俺は、自分のエコバックを拾いあげるが、いつの間にか、逃げるために放り投げてしまったようだ。

 

 そのせいで、コンビニスイーツの形が崩れてしまっているのだが―…。


 はあ~、このスイーツの弁償をあの無精髭おっさんにしてもらいたい。無理か。


 諦めていると―…。


 「近くの公園まで行くぞ、十言。」


 と、声がした。


 声がしたほうに向きを変えると、そこには、猫が一匹いた。


 その猫を俺は知っている。


 「母さん。」


 そう言うと―…。


 「黙ってついてくるのじゃ。重要な話をする。これは、十言のこれからにとって、とても大事なことなのじゃ。」


 俺は、ただ、アルケーについていくのであった。


 近くの公園に向かって―…。

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