第4回 ファンタジーな人生を送っている俺だけど、命を狙われる人生だけは勘弁してくれ

 俺は歩く。


 あれ、家にいたんじゃないの。


 家の中の続きは―…。


 そんなものは、自分の部屋に戻って、夕食を食べるだけのことをあえて言う必要はあるのか。


 いや、ない。


 そんなことを知って何が楽しいのだ。


 俺にはわからない。


 いや、理由。何の?


 家の外にいる。


 ああ、そうか、それね。


 理由は―…、あれだよ、そう、あれだよ。


 ちょっと思い出してみる。



 ◆◆◆



 それは、夕食を食べた後のことであった。


 いつも通りに、俺が夕食で使った皿などの食器を洗っていた。


 母であるアルケーは、猫なので、手を使って食器を洗うことができない。


 昔は、神力を使って、洗っていたみたいだ。


 それを今は、俺に任せっきりにしているようだ。


 俺が成長した後に、料理だけして、後片づけをしない、男にしないためだとか。


 まあ、食材にこだわって、食費を過剰に消費してしまうこともダメだとか言っていたけど―…。


 そんな話を聞いていると、結婚って辛いものなのではないかと思ってしまう。


 そんななか、アルケーが、言ってきたのだ。


 「あれ、お菓子がないの~う。十言。コンビニに買いに行ってくれるか。それと、女の子がエロいポーズをとっている漫画雑誌と、何か立ち読みできないようになっている成人コーナーにある雑誌もついでに頼む。」


 お菓子を入れている籠の中をあさりながら―…。


 そして、アルケーの言っていることの意味を俺は理解した。


 「ああ、お菓子は買ってくるよ。だけど―…。」


 と、あえてためをつくった。


 「成人コーナーにある雑誌は、買わないからな。自分の子どもに買わせようとするな。」


 なんで、エロ系雑誌を息子に買わせるように頼むのかな~。ホント。


 「なぜじゃ。儂は、それを生きがいにしているのに~。」


 と、悔しそうにするアルケー。


 なぜ、悔しがる。つ~か、エロいのは、ネット販売をしているところから注文して、購入してくれ。


 あ~あ、そうか。猫のままだと、宅配を受け取れないもんな。


 昔は、いつも、人の姿に化けて受け取っていたのに―…。


 じゃあ、今もそうすればいいだろうに―…。


 まあ、それを指摘しても答えはしないだろう。


 俺は、食器を洗い終えて、手を洗って、水気をタオルで拭きとる。


 「じゃあ、コンビニ行ってくる。」


 「それなら、エロ雑誌も買って―…。」


 と、アルケーが言うあたりで、


 「それはない。買うのはあくまでもお菓子のみだ。」


 と、俺は言った。


 アルケーが、血涙を流していたが、それを無視し、気づかないのを装って俺は家の外へと出ていくのであった。



 ◆◆◆



 というわけだ。


 アルケーにお菓子がなくなったといわれ、コンビニで補充しようとしたのだ。


 普段は、宅配で届けてくれるので、食材に困ることはない。


 ただし、お菓子などは、実際に、買い物して決めることにしている。


 アルケーは買い物にこれないけれども、宅配でわかりにくい、新商品のパッケージの大きさ、コンビニにしかないスイーツなど、実際にコンビニに行かないとわからないので、こうしてコンビニに買い物に来ているわけだ。


 アルケーは、コンビニスイーツのここ十年から二十年ぐらいの進化によって、ハマってしまったようなのだ。


 だから、コンビニスイーツを買いにも来ているのだ。


 その前に、俺は、雑誌コーナーで適当に少年向けの週刊誌の最新刊を見るのである。


 まあ、いわゆる立ち読みだ。


 それを終えるのに、十分から十五分ほどだ。


 終えると本格的に、コンビニスイーツと、お菓子を何にするかを買い物かごのある場所を見つけて、そこにある買い物かごを一つとって、じっくり吟味を開始するのである。


 アルケーは、チョコやチーズ系のものを好み、俺は、つぶあんやこしあんなどや、ポテトチップスなどを好むので、そこを重点的に―…。


 そして、買い物を決めて、レジで会計を済ませて、エコバックに入れて家に向かって帰るのである。


 エコバックが本当に地球環境にやさしいのかは、製造工程までを含めて見ないとわからないが、レジ袋が有料で、その費用が無駄遣いになると思い、エコバックを使っているのだから―…。


 レジ袋は、ゴミを入れて、まとめるのに役に立つのに―…。


 プラスチックごみは、ちゃんとした場所に捨ててほしいと思ってしまう。


 そして、コンビニから出て、家へ向かって行く。


 その道の中、一人の影があった。


 ただの通り過ぎの人だろう。


 俺はそう思っていた。日常の経験から―…。


 だけど、普通の人が体験することのない非日常を経験している俺は、この日、また、新たな非日常に出会うことになる。


 そして、神という存在への戦いに巻き込まれていくのである。


 そして、一人の人物とすれ違う。


 その時、言われたのだ。


 「お前が、各田十言だな。」


 一瞬、俺の名前を呼ばれ、ドキッとした。


 もしも、これが美少女から言われ、その子からの俺が好きという告白であったのなら、これほど嬉しいことはないだろう。


 だけど、だけど、言われたのが四十代そこらと思われる不精髭ぶしょうひげのおっさんなのだ。


 それだけで、俺の体は縮こまってしまうのだ。


 そして、不精髭おっさんは、


 「お前には、死んでもらう。」


 と、言って襲ってきたのだ。


 俺は、こう思う。


 ファンタジーな人生を送っている俺だけど、命を狙われる人生だけは勘弁してくれ、と。

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