第2回 悪魔と呼ばれし青年

 廊下を歩いている。


 下駄箱に向かって歩いている途中だ。


 そこで、同級生が俺のことをヒソヒソとこう言う。


 「悪魔よ。あいつといると、神力しんりょくが使用できなくなるの。あいつは不審者に違いない。神信会しんしんかいに通報しなきゃ。」


 「ダメだって。証拠がない。それじゃあ~、今の神信会では、断られるだけ。実際に、生徒会長の山崎やまさきさんが、神信会に言ったのだけど、証拠不十分で却下されたんだよ。」


 「おいおいマジかよ。皆、あいつの近くだと神力が使えないんだよ。ありえねぇ~。やっぱり、最近、神信会は、腐敗しているのか。」


 「しっ―――――。それは、言ってはいけないよ。私たちが、神信会から目を付けられるじゃない。」


 「そうね。ごめん。」


 俺が近くにいると神力が使えなくなるのは、知っている。


 俺だって、好きで、神力を使えなくする能力を使っているわけじゃない。


 生まれてからずっと、体が勝手に発動させてしまっているんだよ。


 コントロールしようとしてもできなかったんだ。


 何度も何度もしたけど―…。


 それで、何度も神信会に警告されたことか。


 この俺の力、周囲にいる人の神力を使えなくする能力は、半径三メートルほどにいる人の神力を使えなくするという単純なものだ。


 この力の正体は、誰にもわからないらしい。


 この力のせいで、いつしか俺はこう呼ばれるようになった。




 ― 悪魔 ―




 神を信じずに、逆らい、人類をも滅ぼす人を悪魔と呼ぶ。


 悪魔は、元々神の教えに逆らい、人類を滅ぼそうとする魔物の一種である。


 人類は、神を信じずに、悪魔のように自分が世界の支配者だと思ったせいで、崩壊したなんていう学説すらあるほどだ。


 えっ、神力って何?


 ああ、説明を忘れていた。ごめん。


 神力っていうのは、神が新たに人類を創る時に与えた、不思議な力みたいなものだ。


 どう言えばいいのか?


 ファンタジーものの魔法みたいなものと言えばいいのかな。


 神の創ったこの世界だと、魔法は悪魔が使う、魔力を律して、発動させるものなんだけど―…。


 まあ、細かいことはさておいて、俺にも詳しいことはわからないし―…。


 ようは、神力を使えば、物を動かしたり、火や水、風などのようなものなどを起こせるわけだ。


 で、その神力は、俺がいると使えなくなるという話に戻る。


 そのせいで、俺は悪魔と呼ばれているわけだ。


 本当に、不名誉な称号だ。


 悪魔は、神のしもべなのに―…。


 これ、本当のことだよ。


 悪魔と呼ばれてからは、友達もいないし、皆が想像するリア充的なことや青春の日々すら送ることもできないんだよ。


 リア充にどれだけ嫉妬したことか。


 今、思い出すだけでリア充に腹が立ってきた。


 なんで、俺が―…。


 と、思ってしまっても無理はない。


 だけど、彼らに八つ当たりしても、何かが解決されるわけじゃないし。


 それに、俺―…、神力が使えないんだよね。


 別に、物をサイコキネシスの能力者のように運んだりするようなことはできるんだ。ちょっとしか動かせないので役に立たないけど―…。


 ただし、火や水などような属性があるものは、一切扱うことができないんだ。


 どうして、俺はこうなんだろう。


 そして、俺は、下駄箱に到着し、上靴から靴に履きかえる。


 履きかえると、玄関を出て、学校の外へと出る。


 神信学園を見ながら―…。


 この神信学園は、神信会日本本部が直接運営する学校である。


 神信学園は、神信会日本本部の敷地内にあり、校内は広いし、神信会の施設がいっぱいあるので、必要なとこ以外は、どこに何があるのかわかりやしない。


 もう少しコンパクトにすればいいのに―…。


 そして、俺は家へと向かって帰るのだ。


 俺にはまだ、非日常ではないかと思われるヒト(?)のいる場所へ―…。

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